オリエント、エジプト、中南米、ギリシャ・ローマ、シルクロードとインド、中国の古代文明の遺産に関しては今までも内外の博物館・美術館や特別展でお目にかかってきました。こうした遺跡や遺物は紀元前3千年とか4千年という気の遠くなるような昔の文明の痕跡であるにもかかわらず、まるで昨日それらが消滅したばかりというぐらい鮮明にまた完璧に保存されています。
ところが今回の展覧会が非常にユニークだと思ったのは、上記6つの文明に加え、我が日本の縄文文明がエジプトやメソポタミアに負けず劣らずの迫力で肩を並べていたことです。正直言って縄文時代とは“いまだ文明以前”ぐらいに漠然と思っていた私には大ショック。何に驚いたかというと、十日町市博物館蔵の国宝・縄文式火焔型土器の推定年代として紀元前3500年―2500年頃と明記したあったことです。
年代の古さにおいても美的価値においても古代エジプトやメソポタミアのものに全然負けていません。日本で古代史というとせいぜい邪馬台国はどこにあったのかとか、卑弥呼とは誰だったのか、のあたりで思考が停止してしまっていて、それ以前はおおざっぱに縄文、弥生時代とひとまとめにしていたのが我々の古代史観ではないでしょうか。それが一気に5500年も遡れるなんて!
そのことを生まれて初めて知っただけでも「古代七つの文明展」を見た価値があります。エジプト学の世界的権威である早稲田大学名誉教授・吉村作治氏監修の非常にレベルの高い催しものがこの岡山で開催されていることにも感激しました。
美術館に入ったのが4時過ぎだったのでゆっくり見学するひまもなくあっという間に閉館時間に。しかしもうひとつ驚きがありました。館外で吉村先生とばったり出会ったのです。すると友人は先生に親しくあいさつしたのでびっくり。何でも昔アルジェリアでサハラ砂漠探検をする吉村先生、曽野綾子さんを接待したことがあるそうです。古代悠久の歴史もおもしろいのですが、人の出会い、再会もまた奇なりと思いました。