例年なら梅雨明け10日は申し分のない晴天に恵まれ登山やキャンプに絶好の季節ですが今年は「経験したことのない豪雨」があちこち列島を襲っています。家屋や車はおろか道路まで洪水に流される映像を見ていると日本の天気はいったいどうなったのかという気がします。
それに加えて山口県の山間部集落で起きた不気味な大量殺人事件は何か人ごととは思えません。長期間に渡る孤立無援の介護、いなかの人間関係のうっとうしさ、疎外感、自分自身の老いと孤独。山口の男と同じ境遇にいながら爆発寸前で踏みとどまっている人は多いでしょう。
いったいこんな状況の中で本当に気張らしになり、気分転換になるものなんてあるのだろうか?と日々思っていたらネット上で室町時代ごろ描かれたと思われる「屁合戦絵巻」に遭遇しました。江戸時代の写本が早稲田大学図書館に現存し、デジタル化した画像が広く公開されています。まずは作品を早大図書館ホームページでご覧いただきたい。
最初の数シーンではふた手の貴人たちが何やら作戦会議を開いています。屁の原料である芋を仕込み大きな鍋で煮ていよいよ戦闘開始です。双方のチームともお尻丸出しで強力な屁ビームを発射。ビームの威力は防御板をぶち抜き、馬をひっくり返し、猫を空中に飛ばせます。応戦する男女はうちわで屁ビームをはね返し、鼻をつまみながら敵陣深く尻を差し入れ強烈な一発をお見舞い。
行司役の男は敵味方双方の女性が放つ屁に空中2メートルぐらい浮き上がっています。試合を有利にすすめるためにあらゆる努力を惜しまず工夫する男女。試合の結末はどうなったのかこの36枚のカットではよく分かりませんが、感想をひとことでいうと中世の日本人はすごい! 人生を楽しんでいます。
考えてみれば当時も世相は暗く、血で血を洗う争いに明け暮れていた時代でした。でもこの絵巻の作者はそうした世相を「屁合戦」として芸術に昇華させることに成功しました。
現代の日本が関わる国際紛争も実弾ではなく屁ビームで平和裡に決着つけてほしいものです。日本人にはそういう知恵が古来あることをこの絵巻は語っているように思います。「まず笑うこと」。いかがです?