2017年1月20日金曜日

役人の生理学


19世紀フランスを代表する文豪の一人であるバルザックは「谷間の百合」など大作のほかにも「役人の生理学」のような辛辣なエッセイを残しています。バルザックによると「役人とは生きるために俸給を必要とし、自分の職務を離れる自由を持たず、書類作り以外なんの能力もない人間」だそうです。
1月末にベトナムに行こうと友人から誘われたのですが、いつのまにか10年前に作ったパスポートの有効期限が残り少なくなっていて、新年早々に岡山駅西口にあるパスポートセンターに行き発給申請をしました。そして待つこと1週間、交付開始日にさっそくセンターに向かって車で出発したのはいいのですが途中で財布を忘れていることに気づきUターン。情けないし疲れます。
気を取り直して再出発、イオンモールに車を止め、旅行のガイドブックなど物色して、そのまま徒歩でセンターに向かいました。歩くにつれ持病の右ひざが痛みます。やっとのことで駅を越した辺りでふとかばんをチェックしたら、今度は「一般旅券受領証」がありません! 重い足を引きずりながら半分ほど引き返した時点で考え直しました。「待てよ、受領証は受領証に過ぎないではないか、紛失する人もいるだろうし忘れる人もいるだろう。ダメもとでお願いしてみよう」と。
案の定、係りの女性は「渡せません、取りに帰ってください」とにべもない。「家に帰っても紛失しているかも知れないし」と私。「受理番号が不明では探すのに時間がかかるし、他の人の後回しになるので相当お待たせします」と係員。いちおう原則論というか意地悪を言ってきます。それが「役人の生理」ですから。
「何だ、絶対ダメではなさそう。それに時間がかかると言ったって平日の昼下がりは開店休業状態。お客は2,3人しかいないし、パスポートは日付順に保管してあるに相違なく、まさか午後中待たされることもあるまい」。案の定、2分もしないうちに呼ばれ、あっという間に真新しい10年パスポートを賜りました。

財布を忘れ、大切な受領証を持参するのを忘れるとはボケもいいとこですが、ボケた分知恵というか押しの強さが身についた感じがします。とまれ、現在満68歳、この先元気でも旅券更新できるのはあと1、2回だけ、わが旅人生もthe endが見えてきました。

2017年1月13日金曜日

大学ブランド力

先日新聞を見ていたら「中四国大学ブランドランキング」なるものが目に止まりました。民間調査会社が全国の大学の認知度やイメージを調査して公表しているとか。それによると中四国の主要59大学で岡山大学が初の1位を獲得しました。
中四国に大学が59校もあることにもびっくりですが、広島大学を抜いて岡山大学が1位を獲得したことに県民としては「岡大、がんばってるな!」と賞賛を贈りたい気持ちになりました。岡山大学といえば昨年秋に次期学長選挙があり、現在の大学病院長の槇野博史氏が4月から学長(任期4年)に就任することになっています。
実はこの槇野先生、中学校の同期です。同じクラスになったことがないので特に親しいというわけではないのですが、同じ学年から岡大学長が生まれることになったのは同窓生として誇らしく、同期会のメーリングリストにエールの一文を書きました。
「岡山大学は学部数においても施設環境面においても第1級の総合大学であるけれど、惜しいことにブランドイメージが今ひとつ。槇野君には任期の4年間にブランド力向上に奮闘してもらいたい」などと。そのあとで冒頭の「岡大のブランド力は中四国1位」の記事を読んで自分の不明を恥じたものです。
岡山大学のブランド力に貢献しているのは移植手術などが頻繁に報じられる医学部の存在が大きいようです。ランキング4位のノートルダム清心女子大は学生が礼儀正しく品位がある点が評価されていますが、長年学長・理事長を務めてきた渡辺和子さんの存在抜きに同大のブランド力は語れません。また草食恐竜の世界最大級の足跡化石を発見した岡山理大も7位にランクされています。
さて、中四国に限ったランキングから全国に目をやるとやはり岡大のブランド力(信頼・共感・人気・ユニークさ)はあと1歩、いや2歩の観があります。先年、徳島大学出身の中村修二さんがノーベル物理学賞を受賞したときは日本中が沸き返りました。徳島という地味な土地柄が一挙に全国区に躍り出た瞬間でした。

地道に教育と研究を遂行している岡大の実力は学会では高く評価されていますが、やはりブランド力アップのためには徳島の例のように派手なイベントも必要だと思う次第です。

2017年の年頭にあたり

昨年は身近においても国内国外情勢においてもいろんなことがありました。思いつくままに感じたことを述べてみたいと思います。
国内の話題で私がもっとも驚かされ、同情すべきと思ったのは天皇陛下のおことばでした。すでに陛下は80歳を過ぎていて政府も対応が急がれ、有識者会議でもいろんな意見が出ました。私が非常に違和感を覚えたのは、国民の8割が陛下のおことばに賛同を示しているのにもかかわらず、有識者のうちの何人かはあからさまにおことばに反対する意見を表明していたことです。
退位反対論者が危惧するのは崩御以外で退位が起きると院政が出現し国が乱れる元になるのではないかということのようです。しかし、たとえば白河天皇が上皇になったとき年はまだ30代前半の血気盛んな青年であり新天皇(堀河天皇)は10歳にも満たない少年でした。現在のご高齢の天皇陛下が切実に願われていることに対する反論としては、およそ年齢も政治情勢も時代背景もかけ離れ、まったくの杞憂に過ぎない空論だと思います。
単純に定年制を設ければいいだけの話ではないかと思います。そして天皇皇后両陛下には今まで多忙でできなかったことを心ゆくまでしていただき、またゆっくり静養していただくことこそ国民の多くが願っていることではないでしょうか。
一方国外ではリオ・オリンピックのほかにイギリスのEUからの離脱、ヨーロッパにおけるテロ、難民流入問題、韓国大統領弾劾可決、米国トランプ勝利など予測不能なことがいろいろありました。グローバリズムからナショナリズムへと時代は移っていくのでしょうか。
プライベートなことでは、長年介護をしてきた母を8月末に失いました。ちょうど県庁のミュージックサイレンの終了と時を同じくし、一連のお別れのようすが偶然にもNHKのローカル番組で取り上げられたことが強く印象に残りました。
また年末になって、まったく予期しなかったことですが、幼なじみのメロン栽培家、河口君が風呂で倒れそのまま帰らぬ人となりました。まだまだもっと究極のメロンを作ると張り切っていたのにあまりに早すぎる旅立ちでした。

本年こそだれもが楽しく笑って過ごせるいい年でありますように。