2017年11月29日水曜日

イタリアへの旅(3)

 旅行の楽しみは名所旧跡を見て回ることだけではありません。そこで暮らす人々とのふれあいこそ旅の真の喜びです。日本に大挙して押し寄せてくる外国人観光客も都会や田舎で出会った日本人についてネットで熱く語っています(悪口は皆無)。
 ローマ観光初日のランチは同行のK君とホテル近くのレストランで。「本日のメインはラムのカツレツ」と店の表にメニューが掲げてありました。料理の注文に際して「外のメニュー」と言うべきところを間違って「花のメニュー」と店主に言ったらしく店主はfuori()とfiore()の違いを花瓶の花を指しながら指導してくれました。こんなところでイタリア語のレッスンを受けるとは!
隣のテーブルに座った若いカップルが小声で楽しそうにしゃべっています。彼らの言葉は今まで聞いたことのない言葉、どこの国の人だろう? 私は思い切って聞いてみました。変なおっさんのぶしつけな問いにもにこやかにいろいろ自己紹介してくれました。イラン人でした。
彼らは今はトルコのイスタンブールに住んでいて、若いご主人は会社員、黒髪が美しい若いマダムは建築学のドクターコースで勉強中とのことです。「次の旅行はぜひイランとトルコへいらして下さい」と薦められ、ご主人は名刺までくれました。私は若いころよくこんな感じでふと知り合いになった人を実際に翌年訪ねて何人もの人と生涯の友人になったものです。イスタンブール、いつかきっと旅したい街です。
4連泊した安ホテルの受付のおじさんは私が日本人だと分かると、「葉隠」(はがくれ)を読んだ、感動した、と話かけてきました。「葉隠」は私の愛読書でもあり、おじさんはどんどん饒舌になります。しかし私のイタリア語では深い内容にまで立ち入ることはできません。残念。もっと話したかったのですが。

旅の最後の日の昼食はK君とちょっと高級なレストランに入りました。でも店は家族経営みたいでとてもフレンドリー。息子とおぼしき青年がサービスしてくれます。とても若いので「高校生ですか?」と尋ねたら「明後日は私の23回目の誕生日です」と笑いながら「日本にぜひ行きたい」と言っていました。生ハムもピザも絶品! 年を取り、旅に出て、そこで出会った人々とするたわいもない話。これって全然悪くないです!(続く)

2017年11月26日日曜日

パパイヤ収穫

気温が零度近くなってきたので畑のパパイヤを収穫しました。写真では分かりにくいのですがかなりの大きさのパパイヤがゴロゴロと。家の中で黄色く熟成するのを待ってみます。青いパパイヤの実の千切りはタイのサラダ、ソンタムに入っていて有名。でも完熟し甘くトロっとなったものが食べたい!

2017年11月24日金曜日

イタリアへの旅(2)

関西空港から北京経由でローマにやってきました。空港から市内中心にあるテルミニ駅まではノンストップの電車で移動しました。今回も旅の相棒は昔の職場の後輩K君です。
K 君はかつては大学の事務職員として教員や学生のお世話をてんてこ舞いになりながら熱心にこなしていたのですが、安倍首相と同じ腸の難病に苦しめられ40歳にもならないうちに退職し、今は大阪でのんびり過ごしています。もう永久に働く気はないようです。K 君と私は、年の差は20歳以上あってもお互いひまで、いつも電話で「何か楽しいことない?」「ない!」と言いつつ、年に2回くらいは誘いあって格安の海外旅行に出かけている間柄です。
テルミニ駅はイタリア映画「終着駅」(1953)の舞台として、かつて日本で知らぬ人はいないくらい有名な駅だったのですが、日本人にとって駅の概念としての「終着駅」はなじみがうすいですね。岡山駅や大阪駅は終着駅ではありません。線路がそこで終わらず続いていますから。ところがテルミニ駅は文字通りそこが終点の駅です。映画のタイトルはもちろん主人公たちのラブロマンスの終わりを暗示しているのですが、今では「終着駅」という語感の良さが独り歩きし奥村チヨの名曲のタイトルにもなっていますね。(話題がことごとく古くて申し訳ないです)
さてそんな由緒正しい本家本元のローマのテルミニ駅に降り立った我々「老年中年コンビ」は駅近くの格安ホテルにチェックインしたあと、駅の中にある「にぎわい広場」というか飲食店が集まったコーナーへ夕食を取りに行きました。1972年の正月に初めて来たときの暗くてわびしい終着駅の面影はどこにもありません。威勢のいい店のお兄さんたちの呼び込みに我を忘れて、チーズ、生ハム、ピザ、アーテチョークのオイル漬け、ワイン、ビールとまるで欠食児童のように手当たり次第に注文し、胃の中の納めました。ムフフフフっと旅に出た歓びがわき起こる瞬間です。
翌日は路線バスに乗ってボルゲーゼ美術館に行きました。カラヴァッジョの絵が数点あるので大変な人気美術館ですが、前回記したように日本でチケットをネットで購入していったのは正解でした。料金もむしろ安いぐらいでした。美術館の建物そのものが美術品である館内に1歩入って目にしたおびただしい数の油絵と彫刻にはもう言うべき言葉がありません。素晴らしすぎます。
西洋の古典絵画や彫刻の大きな特徴としてその具象性というか人物を写真に切り取ったようなリアリスティックな表現方法が挙げられます。例えば、少年がみずみずしい輝きを放つブドウの房に食らいついている色彩感、臨場感は個性の表現を極限まで避けた日本の絵巻物などの人物像とは著しい対比をなしています。

そして、そうした絵画や彫刻のモデルとなったであろう古代やルネサンスの人物が、表情や仕草を少しも変えることなく、この街でワインを注ぎ、「ボンジョルノ!」とあいさつしてくることに改めて驚きます。千年、二千年どころか数千年の昔も現代と何一つ違わない人々の思いと暮らしがあったであろうことが絵や彫刻を通して如実に感じられます。(続く)

2017年11月15日水曜日

イタリアへの旅(1)

カナダ旅行が思いの外楽しく有意義だったので、旅に出る感覚を忘れないうちに次の目的地を探しました。2001年以来出かけることがかなわなかったヨーロッパ、その最初の訪問地はイタリアの首都ローマです。
もうかれこれ50年も昔のことになりますが、本業の心理学の勉強はそっちのけで日々映画三昧の学生生活を送っているうちにイタリアにはまってしまいました。大学ではイタリア語のクラスにも顔を出すようにし、イタリア語会話もイタリア人の先生からみっちり教えてもらいました。
しかしその後の人生ではとくにイタリア語に関わることもなく、たまにオペラやカンツォーネを聞くと「ああなつかしい!」と思うぐらい。しかし人生も終盤に入り残り時間が少なくなってきたことを体の不具合を通じて思い知らされることしばしばのこのごろ、昔愛したしたものを今一度ゆっくり味わいたいと思うことが次第に多くなってきました。
今回の旅行ではあらためて青春時代に熱狂したイタリア的なるものの本質をわずかでも垣間見ることができたらいいなと願っています。昔取った杵柄ではないですが、今も頭の片隅に残っているイタリア語の知識が今回の旅を実り豊かなものにしてくれるものと信じています。
さて往復の航空運賃とローマ4泊のホテル代の合計額がわずか7万円にも満たない旅ですが、飛行機に命に預ける点に関してはエコノミーの席もファーストクラスのリッチな席も同じこと。10何時間かのフライトで10数年間「行きたい、行きたい」と夢見てきたローマに到着してしまうのはワクワクものです。
ローマではこれまで一度も訪れたことがないボルゲーゼ美術館だけは外せないと思い、ネットで入館の予約を取りました。カラヴァッジョのコレクションではイタリア随一の人気美術館で、現地では当日券は販売していないという情報です。
初めて開いた旅行サイトに個人情報だけでなくクレジットカードの番号やセキュリティコードまで、おっかなびっくり入力しつつ、ネット時代の旅では避けては通れないスリル満点の手続きを盲信して旅の準備がすすみます。ときにはネット社会にだまされます。でも昔の5分の1の費用で旅行できるようになったのもこれまたネットの産物。まさに痛しかゆしです。(続く)

2017年11月8日水曜日

16年ぶりのイタリア旅行

カナダ旅行がうまくいったのに味をしめて、旅行から帰ってきたすぐ後に今度はイタリアに行くことを決めました。11月18日から23日までの1週間です。猫がいるのでそれ以上の日数を留守にするのはためらわれます。それにローマのような見所が多い町でも滞在するとけっこう退屈するのでそのくらいの日数がちょうどいい感じがします。
HISの航空券とホテルがパッケージになっている旅行プランで値段は確か8万円ぐらい。中国国際航空の関空ー北京経由ーローマ便に乗るのですが、トランジットとはいえ北京(空港)に行くのは生まれて初めてです。イタリアではローマに4泊ですがナポリとアッシジに出かけてみようと思います。たぶんイタリア語はそんなに忘れていないでしょう。フランス語よりはましな感じです。
会話としては、日本語>英語>イタリア語>フランス語>中国語、
読むのは、  日本語>英語>中国語>イタリア語>=フランス語
ナポリは1972年の正月にアルジェ空港から出かけたことがあります。ソレント、カプリ島、ポンペイなど45年も前に見た風景を今でも鮮やかに覚えています。

マンションの鳩

私が住んでいるマンションの管理組合から鳩の害に関するアンケート用紙が配られました。鳩が建物の北面にある廊下にまで侵入してくるので階段室を含め廊下側に鳩よけのネットを張ることについて、住人の賛否を問う内容です。総工費90万円は修繕積立金から支出するとも書かれていました。
「大した被害があるわけでもないのに不細工なうえ意地悪いネットなんか!」というのが私の実感。それに簡単なネットを張るだけの工事費が90万円とは高過ぎやしないか?という疑問もあり、賛否欄には否に丸をつけ、その理由として「鳩は平和の象徴だから(そんなことをしてはかわいそうではないか)」と我ながら訳の分からないことを書き記して提出しました。
その後アンケートの結果が公表され、ネット設置が決定したことが報告されていました。「鳩は平和の象徴だから」という私の少々いかれた反対意見も白日にさらされてしまいました。そしてまもなくネットが張り巡らされ、鳩が入ってくるのはピタッとやみました。まあまあよかった、網目もそんなに目立たないし!
ところがある日の昼下がり、和室でくつろいでいたら「グルグル、クックー」といやな声がすぐ近くから聞こえます。ガラス越しに外を見たら何と鳩のカップルがベランダの手すりに止まって機嫌良く鳴いているのです。ベランダには鳩のフンが散乱し強烈な悪臭が……。何のことはない、廊下に入って来れなくなった鳩が住戸のベランダ側に回っただけなのです。そして私は初めて鳩がもたらす公害の実体を知りました。
エアコンの室外機と壁の間にはすでに小枝がいっぱい。どうやらそこを愛の巣にしようという魂胆がありあり。私はあわててベランダの手すりに両面テープを貼り、室外機を網で覆いました。作業中、鳩のカップルは隣の戸建て住宅の2階の屋根からこちらをじっと監視していました。
結果、いやがらせ作戦が功を奏して鳩のカップルは来なくなりました。ちょっとかわいそうだったかなと思ったのですが、鳩もなかなかしぶとい。今まで糞害のなかった駐車場に泊められた車の屋根全面にもこもこフンが落ちています。私の駐車スペースでなくてよかった!(と密かににっこり)。見よ、90万円をかけて糞害が拡大しただけ。あんな賢い鳥を追っ払うことなど不可能です。

2017年11月1日水曜日

運転マナーあれこれ

このごろ毎日のように悲惨な交通事故のニュースを聞きます。居眠り運転、信号無視、逆走、スピード出し過ぎ、酒気帯び運転など、いわば従来型の事故に加え、このごろ運転する人の心のブレーキが壊れているとしか思えない恐ろしい事故が多発しています。追い越されたのが気にくわない、急ブレーキに腹が立つ、こっちを見た等々子どものけんかみたいなことを高速道路の走行車線で繰り広げる輩の何と多いことか!
最近も悲惨な事件が報じられました。当初は単なる追突事故として処理されていた東名高速夫婦死亡事故です。サービスエリアで車の止め方を注意された男が逆上して、時速150キロで注意した人の車を追いかけ、高速道路の追い越し車線上で車を止めさせ、トラック追突という大事故を招いた何とも恐ろしい事件。
犯人として逮捕された25歳の男は過去に何度も同様の危険な行為を行っていたと報道されていますが、女連れだととくに人格が豹変してイキがっていたそうです。今回の事件のような極端な例は別にしても車にはハンドルを握る人を狂わす何かがあるような気がします。
私自身も運転中は人格が変わります。私がいつも通る道はとても狭くすれ違いも困難。対向車が見えると、この道に慣れている人は阿吽の呼吸で対向できる場所まで車を進めます。ところが高齢者や女性は対向車を見たらその場で固まってしまうことがしばしば。イラついた私は思わず「違うだろう、そんなとこで立ち止まって!このボケッ」と前衆院議員のおばちゃんみたいな暴言を心の中で口走っています。ほんとうに思慮に欠ける運転マナーだと自戒、反省。
先日、JR西大寺駅から東備バスに乗って牛窓まで出かけました。久しぶりに乗った路線バスの運転手さんの運転ぶりを一番前の席に座って何気なく見ていたのですが、感嘆のひとことでした。乗客一人一人に丁寧にあいさつし、停留所の案内をし、しかも運転技術はまさにプロ!そもそもあんな巨大な車体をどこにも当てずに安全にしかもきびきびと走らせること自体が信じられません。その上の心のこもった乗客対応です。
終点近くの停留所で、降り際に「さすがプロですね!」と思わず声を掛けてしまいました。自分もこれからはこんな品格ある運転をしようと心を打たれたバス乗車体験でした。