2019年10月29日火曜日

褒める文化

 星の数ほどあるYouTube上の英会話プログラムの中に“Hapa英会話”というのがあります。ロス在住のJunという日米ハーフの青年がほぼ毎日無料発信している動画サイトです。Hapa英会話では毎回日本語と英語の微妙な差を的確に説明してくれるので実践的な英会話が身につくだけでなく、日本人とアメリカ人の発想の違いもより深く理解できます。
 日米での発想法の違いでJunがよく取り上げるのが「アメリカ人は褒めること(compliment)、褒められることが大好き」というのがあります。そういえばアメリカ人やカナダ人は本当にささいなことでも挨拶代わりによく褒めてくれます。「その靴いいなあ!」、「素敵なセーターだね」、「こんなおいしいピザ食べたの生まれて初めて、君は料理の天才だよ」と、とにかくオーバー。
 それに比べ日本には古代中国の儒教的価値観がいまだに残っている面があって、私など人を褒めたり、また親しくもない人から褒められるとすぐに論語の「巧言令色、鮮なし仁」を連想してしまいます。要するに、言葉巧みにおべんちゃらを言うようなやつは信用ならない、と。
 確かにたまに人から褒められると、アメリカ人のようには素直に反応せず、「あんた、具合悪いんじゃないの?」とか「えっ?お前がそんなこと言うとは雪でも降るんじゃないか?」と棘のある言葉を冗談ぽく返すことも珍しくありません。
 そう言えば9月にカナダの親戚を訪問したときもずいぶんたくさんのComplimentをいただきました。私が持っていった“抹茶味カフェラテ”も「こんなおいしい飲み物はカナダにはないよ!」とか「昨年の関西・岡山旅行ほど楽しい旅は今までなかった。お前が我々の滞在が楽しく意義あるものになるようにと用意周到に準備してくれたことに今も大変感謝している」とずいぶん過剰な言葉をもらい面はゆい思いでした。
 しかもそうした定型とも思える褒め言葉を小さな子どもまで恥ずかしがることなくニコッと言葉に出して言ってくれます。そこがポイントだと思いました。小学生のころから大人がどのようにしてスムーズな対人関係を言葉で築いているのかを見て育てば自然と他人の長所を見つけるワザが身につきます。お国柄がなんだかんだと言っても褒められて悪い気がしないのは万国共通です。

2019年10月25日金曜日

秋の北海道物産展

天満屋画廊で虫明焼きの作家、黒井博史展をやっているというのをローカル・ニュースで見て、寄ってみました。地味な備前焼と違って華やかな釉薬がかかっている美しい陶器にうっとりでしたが、この年齢になるとどんなモノもやがてすべて粗大ゴミになるので拝見だけさせていただきました。

7階の催し物会場で恒例の秋の北海道展をやっていたのでそちらも覗いてみました。岡山ではおいしい鮭を売っている店がほとんどなく、秋の北海道物産展はアブラの乗った紅ザケが手に入るいい機会です。半身をスライスし、一切れずつラップした冷凍紅ザケがあったので、売場のおばちゃんと交渉しました。定価5千円というので私が「お姉さん、負けて!」と言ったらあっさり500円引いてくれることになりました。同じ商品が10パックほどありどれがいいかなと思っていたら、おばちゃんが「手に持ってごらん、重い、軽いがあるから。これなんかでっぷり重いでしょ!」と言うので、「ほんま、お姉さんみたい」と相づちを打ちました。おばちゃんは「お客さんも言うねえ」と言いながら私が渡したクレジットカードを持って奥の方へ消えていきました。

おばちゃんはもうひとつアドバイスしてくれました。冷凍鮭はそのまま冷凍庫で保存し、調理するときは解凍しないで、フライパンにクッキングシートを敷いて弱火で焼くとおいしいとのことでした。さっそくやってみたら確かにドリップが出ず、焼き色もつき美味でした。いいことを教えてもらいました。

2019年10月23日水曜日

バレーボール、ラグビーW杯

 令和元年の10月は何かと話題の多い月でした。繰り返し日本列島を襲った台風によって多くの人々が犠牲になり、いまだに苦しんでおられる方が大勢います。いっぽう明るいニュースもたくさんありました。新天皇の王朝絵巻のような「即位礼正殿の儀」も無事終わりましたが、何と言ってもラグビーおよびバレーボール・ワールドカップでの日本チームの活躍は特筆ものでした。
もともとバレーボールは球技の中ではかなりマイナーな競技とみなされてきた歴史があります。日本の女子チームが金メダルを取った1964年の東京オリンピックは日本を興奮の渦に巻き込みました。しかしそのときの参加チーム数は男子10ヶ国、女子6ヶ国に過ぎず、総当たり戦で行われました。男子チームもソ連、チェコに続き銅メダルを獲得しました。
その後バレーボールは欧米を中心に人気が出て、もともと身長が総じて低い日本チームが国際試合で上位に食い込むのは難しくなってきました。そんな日本が28年ぶりに4位にまで躍進したのにはびっくり。連日の男子バレーボールのテレビ中継は本当に見ごたえがありました。とりわけ石川、西田の若きプリンスたちの何と力強く、頼もしいことか!わくわくハラハラの毎日でした。
最終戦のカナダとのマッチは5セット目までもつれ込んで、点数は99で拮抗、心臓の弱い私は「ここまでよくがんばった、でも体格の差はどうしようない、これ以上は無理だろう」と決め込んで見るのをやめました。ところが後でネットでチェックしてみたら「あれっ、勝ってる!?」でした。どたんばで怒濤のサービスエースを炸裂させるのだったら最初から言っといてよ、西田君。
ラグビーの予選突破には私も多くのにわかファン同様興奮しました。前回の五郎丸フィーバーのときはまだ“まぐれ”という感じだったのにこの4年のうちにあそこまでレベルがアップしていたんですね。昔は“何とむさ苦しいスポーツ、よくやるよ、まったく”と思っていた自分の無知と偏見を反省。
そういう意味でラグビーのワールドカップを日本に誘致し成功させた日本ラグビーフットボール協会の森喜朗さんの存在はとても大きい。政治家としては実力者ながらあまりぱっとしなかった森元総理大臣。W杯日本誘致は彼最大の功績です。

2019年10月19日土曜日

組原さん、来岡

沖縄大学教授・弁護士の組原洋さんが那覇から広島出張の途中、岡山に寄ってくれた。

神道山、黒住教本部
喫茶店、ロッキーマックスにて



彫刻家、小林陽介による平櫛田中翁
黒住教本部所蔵


2019年10月15日火曜日

千曲川

 今年最強の台風19号が関東甲信越・東北地方を襲いまたも多数の痛ましい犠牲者が出ました。今回の台風による被害は大雨で増水した河川の氾濫によるものが大きかったのが特徴的です。昨年倉敷市真備で起きた悲劇がより規模を拡大して東日本のあちこちに拡散した印象です。
 今回大きな被害を出した千曲川というと、すぐに思い浮かぶのが島崎藤村の「千曲川旅情の歌」です。素敵な長い詩は次のように始まります。

 小諸なる古城のほとり
 雲白く遊子悲しむ
 緑なす 蘩蔞(はこべ)は萌えず
 若草も藉()くによしなし
   (以下略)

まだ20代だったころ、この千曲川を見たくて当時松本に住んでいた幼なじみを誘って上田まで行ったことがあります。季節は秋だったような気がします。川べりにはたくさんのウグイを焼いて食べさせる店が並んでいました。
ウグイはコイ科に属する淡水魚で流線型の美しい姿をしています。友人と一軒の店に入ってさっそく天ぷらと串焼きを注文しました。「美味しい!」となるはずが実際は小骨が多くちょっとがっかり。信州の上田や佐久、小諸あたりは松茸の産地でウグイ料理の口直しに友人とすき焼き屋に入ったものでした。遠い過去のなつかしい思い出。藤村の詩にあこがれてやってきた千曲川流域の自然は限りなく美しく50年経っても色あせることはありません。
ところが生涯最良の友と思っていたその幼なじみと後年、ふとしたつまらないことで、私の方からまったく一方的に連絡を取ることをやめてしまいました。いや、初めから親友なんかなどではなかったのに、子ども時代から大人になるまで他に友達もいなかったからつきあってもらっていただけのような気もします。
友人関係が終わってもう何十年にもなるのに、信州の美しい景色を映像などで見るたびに大切な幼なじみに不義理をしてしまったこと、そんなことがときおり喉に引っかかるウグイの小骨のように思い出され、後悔に苛まれます。
藤村に詩のインスピレーションを与えた千曲川が容赦なく堤防を破って暴れる様子をみながら、我が人生も山あり谷ありで一筋縄では行かなかったことが痛切に感じられます。平和な千曲川をまた見たいものです。



千曲川旅情の歌 島崎藤村(1900年、明治33年4月)


    一
小諸なる古城のほとり 
雲白く遊子
(いうし)悲しむ
緑なす繁蔞
(はこべ)は萌えず
若草も藉くによしなし
しろがねの衾
(ふすま)の岡邊
日に溶けて淡雪流る

あたゝかき光はあれど
野に滿つる香
(かをり)も知らず
淺くのみ春は霞みて
麥の色わづかに靑し
旅人の群はいくつか
畠中の道を急ぎぬ

暮れ行けば淺間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む 
   二
昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪
(あくせく)
明日をのみ思ひわづらふ

いくたびか榮枯の夢の
消え殘る谷に下りて
河波のいざよふ見れば
砂まじり水巻き歸る

嗚呼古城なにをか語り
岸の波なにをか答ふ
(いに)し世を靜かに思へ
百年
(もゝとせ)もきのふのごとし

千曲川柳霞みて
春淺く水流れたり
たゞひとり岩をめぐりて
この岸に愁
(うれひ)を繋(つな)

2019年10月8日火曜日

キャッシュレス元年

消費税増税の機会をとらえて政府はキャッシュレス社会の実現をめざして、場合によっては増税分を上回るインセンティブをちらつかせています。食品に対する増税は見送ったのにも関わらずキャッシュレスで5%のキャッシュバックをするというのですから訳が分かりません。
それはともかく、海外でのキャッシュレス化の徹底ぶりをみると日本にもそういう時代が来ることは止められないし、また現金主義にこだわる理由もないような気がします。ただ、現金に代わる支払い手段の百花繚乱ぶりにはとまどうばかり。
なるべくひとつかふたつの決済手段に限定しようと思っても、そこにポイント付与条件の損得という要素が加わって決定打を見いだすことはなかなか簡単ではありません。複雑怪奇な決済手段に対応しなければならないお店には心から同情します。
そしてさらに奇怪だと感じることは、国はキャッシュレス社会を目指して声を張り上げているくせに、岡山市では今のところクレジットカードで市民税や固定資産税を支払うことができません。この大きな矛盾に対して自治体行政に文句を言う人はいないのでしょうか。社会保険の支払いでも税金でもクレジットカード払いできれば、チマチマした買い物で付くポイントと比較にならない大きな点数が貯まるはずです。
さて、そんなポイントをいかに賢く稼ぐか?いろんな人がYouTubeで裏技を競っています。航空会社のマイルを効率よく貯めるためには、どのカードを使い、そこで得たポイントをどこそこに移行し、最終的にいかに早く特典チケットをゲットするか、白熱の議論が展開されています。前途有望な青年がこんなことに知恵を絞りうつつを抜かしている社会というものは、間違いなく滅びへの坂道を転がっているとしか思えない……、と私も年輩の人にありがちな文句のひとつも言いたくなります。

そんなことを嘆きつつも、最近クレジットカードのポイントをチェックしてみたら800ポイントほどありました。コスパの悪いギフトカタログなんかには目もくれないで航空会社のマイルにさっそく移行。沖縄往復の特典旅行ゲットまであと少し!そのことに気づいた私はいままで漫然と現金払いしていた日常の買い物や医療費もクレカ払いに変えました。なかなか現金な性格です、我ながら。

2019年10月3日木曜日

ゴマ、小豆の収穫

ゴマの収穫をしました。このまま乾かしてゴマが自然に鞘からはじきでるのを待ちます。

小豆は花が長期に咲くので、収穫も11月ごろまで続きます。写真は最初の収穫分。最終的には赤飯1回分ぐらいの小豆がとれるでしょう。




2019年10月2日水曜日

カナダでの出入国手続き

9月にカナダ旅行をした際に感じた空港での出入国手続き、税関審査のあり方について、感じたこと、日ごろ疑問に思っていることについて述べてみたいと思います。
今回の旅行は関空発バンクーバー乗り継ぎカルガリー着の往復でした。大阪で預け入れたバッグは最終目的地カルガリーでの受け取りです。入国地バンクーバーに到着すると、“キオスク”というパスポート読み取り端末が並んでいるコーナーに誘導されます。その機械がパスポート情報と顔写真による照合、eTA(事前申請した電子渡航認証)情報との照合などすべてをするようです。
さらにキオスクマシーンは税関申告事項を質問してきます。すべての項目に対し”No”をチェックするとレシートがプリントされてきます。これを係員に渡すだけで入国審査と税関申告は終了、カルガリー行きの国内線飛行機が待っているゲートに移動します。
カルガリー到着時に大阪で預け入れたバッグを受け取るわけですが、荷物は到着ロビー外の非制限エリアにずらりと並んでいるターンテーブルから流れ出てきます。この点が日本と大違い。大阪で預けた大きなバッグは税関審査を受けることなく国内線到着ロビーの外で自由にピックアップできます。日本ではありえない税関申告システムにはびっくり。
カナダからの出国はさらに簡単でした。出発24時間まえにエアーカナダから私のスマホあてに「ただ今チェックインをお願いします」の案内があり、その場で搭乗券をスマホ上に発券。空港では大阪までのバッグもセルフサービスで預け入れし、セキュリティに進みます。あとはもう国内線とか国際線などいっさい意識することなく、バンクーバーで乗り換え、関空に帰ってきました。

旅行者の目に見えないところでどのような税関チェックがなされているのかよく分かりません。しかし、日本のように旅客を国内線利用と国際線搭乗にきっちり区分けする必要性ってどこにあるのだろう?カナダでふつうにできていることがなぜ日本ではできないのか、岡山のような小さな空港まで国内/国際の動線を完全分離する意味合いって何なのか?航空機での旅にとって大切なのはセキュリティの確保であって、旅行客の行き先ではないと思います。入管、税関の画期的改革を望みます。