2008年10月29日水曜日

鶴亀算


 小学校高学年のころ不可解かつ奇怪な算術に苦しめられたものです。鶴亀算、水道算、旅人算、並木算のたぐい。教科書には載っていなかったものの、難関中学校受験問題集にはそんな奇怪算数があふれかえっていました。

 鶴亀算と格闘する私に教員だった両親は、「そんなものは中学校に入って方程式を学べば簡単に解けるので覚える必要はない」と常識的な線でなぐさめてくれましたが、本当は親も鶴亀算など理解していなかっただけのような気がします。

 鶴亀算に代表される算数文章題が小学生にとって必要かどうか現在でも教育関係者の間でホットな論争が繰り広げられています。

 文章題は難関中学入試で生徒の選別にとって必要であるとか、方程式に入る前に論理的思考を養うのに効果があるとかないとか。不毛な論争です。

 さて、鶴亀算や方程式などにとらわれることなく、もっと楽で最短な答えの求め方(私流)というと次のようになります。
 
例題。鶴亀あわせて20羽(匹)、足の数は52本の場合。

 鶴を基準に考えます。鶴の数は1羽から19羽の中に正解があるのでまず半分の10羽で計算。この場合足が60本になるので、正解の鶴は11羽と20羽の間にあるはず、そこでまた真ん中の15羽で計算(50本)。つまり2分法で正解を求めるというわけです。
 例題の場合、たった2回の計算ですでに足の合計が50本になったので正解は鶴をもう1羽減らした14羽になります。

 では鶴亀の合計が500羽(匹)ぐらいだったら大変かというと、大丈夫、鶴亀算はなぜか鶴亀合計で20羽(匹)以上という例は見たことがありません。それと鶴あるいは亀がゼロということがないのがいかにも”算数”です。

2008年10月16日木曜日

歯科自由診療


 何ヶ月も前から左上の小臼歯付近の口蓋からときどき膿が でるようになりました。いつまでも放置していては歯だけでなく 全身の健康にまで影響がありそうで、痛みが強くなった日、 意を決して近所の歯科医院を訪ねました。

 ところがこの歯医者さん、今年の春、元の医院のすぐ近くに ひどくバブリーな自由診療の分院を開設、大先生はそこで ご自身が理想とする診療に専念されることになったのです。

 私は従来通り保険診療もある本院の方へ出かけたので すが、「これは理事長に診てもらった方がいい」ということで 半ば自動的にお高い方に振られてしまいました。

 高級ホテル並のインテリア、超大型テレビの前には ブルガリのソファが鎮座し、さらにピアノやバーカウンタに ワイングラスまで備えられています。ときおりハイソな 上得意様を招待して「弦楽四重奏の夕べ」でも催している ようすがうかがえます。

 「ここは自分の身の丈にあってない、要するに治療以前に 居心地が悪い」という気がしたもののさりとて逃げ出す勇気も ありませんでした。診察の結果は、最悪の場合、抜歯して インプラントになるかもしれないとのことでした。

 でもどっちみちインプラントは保険がきかないし、他の 歯医者さんを探すのもめんどうなので先生におまかせ することにし、次回の予約票をもらって帰りました。 そこにはこのように書かれていました。

 「上質な治療を選ばれたあなたはとてもすばらしいと思います」

 先生も言うよねえ! (続く)

***

 歯科自由診療(下)

 自由診療の歯科に予約を入れたもののずいぶん迷いました。 株は史上空前の暴落をしているしこの先どんな経済事情が 待っているか不安です。それにそもそも保険による治療が そんなに劣悪とも思えません。

 ちょうど同じころ父が入れ歯をなくしたと言いだし、父を近所の 別の歯科医院に連れていきました。待合室の雰囲気もいいし 物静かで誠実そうな先生の人柄には好感がもて、私もここで 診てもらおうと心に決めて家に帰りました。

 ところが人のうわさは怖いもので、その歯医者に治療して もらった人が「あそこはお薦めできません」というのです。 理由を聞いたら歯髄が生きているかどうかを調べるのに いきなり歯に電気を通され、衝撃がズッキーンと脳天を襲ったとか。

 実は私も昔大阪でこれをやられたことがあります。車のキーが 静電気でパチッと鳴っても心臓が止まりかけるぐらい極度の 電気恐怖症の私にはそんな歯医者は論外です。

 結局、予約どおり自由診療の先生のところに行きました。 とびきり容姿端麗なアシスタントのお嬢さんが滅菌スリッパを 履かせてくれるのも今日は嫌じゃないな!

 撮影と同時に診察室のテレビモニターに拡大表示される X線写真や歯根部まではっきり映し出されたモニター映像を 見ながらの治療はこれまでの“何をされているのか分から ない恐怖”とは無縁でずいぶんリラックスして治療を受ける ことができました。

 結局、問題の小臼歯は抜歯を免れ治療費も案外リーゾナブルな ものでした。いったん“上質な治療”の快楽に染まったらたたきに 靴やサンダルが所狭しと脱ぎ捨てられている診療所にはもう戻 れません。

2008年10月8日水曜日

同僚の忠告


 2001年3月両親の介護のため定年まで7年を残して早期退職しました。退職することが決まったとき同僚の女性が私に声をかけてくれました。彼女は5人姉妹の長女で苦労して育ったらしく人生を見つめる目はきびしい人でした。


 「あなたに二つアドバイスします。兄弟と仲良くすること、いずれ必ずお兄さんの助けが必要なときがくるので、取り返しのつかないような喧嘩をしないように。もう一つは退職金で株など買わないこと」 そうはいっても親元近くに住んでいる兄夫婦が親のめんどうを見る気がないので私が退職せざるとえなかったのだし仲良くなんてできるはずがありません。株はといえば、信用取引だけは手を出さなかったものの散々な有様です。


 7年後の今、あらためて同僚女性の言葉をかみしめています。いったい人間というものは何故他人や先輩の忠告を聞けないものなんでしょうか。親の意見にも本能的に反撥するようにできているような気がします。


 しかし人生ってこんなものではないでしょうか。親のいうことを素直にハイハイと言って聞くような子は大した大人にならないというのが定説であり、第一自分の人生は自分の好き勝手に生きていきたいものです。


 同僚女性の貴重なアドバイスを二つとも無視した結果は、恥ずかしくてとても彼女に報告できるようなものではありません。「だから言ったじゃないの」という声が聞こえてきそうです。


 しかしながら孤軍奮闘していた介護も兄が学校を定年退職した後、手伝うようになり徹夜で母親のおしめを換えたり、親父に朝飯を食べさせたりしています。案外やるものだと少々見直しました。なんとかなるものです。ただ兄弟仲が悪いことは以前と同じですが。

2008年10月2日木曜日

うんざり選挙


 いったいいつ衆院選をやるのか早く日程を決めてほしいと思っている人は多いと思います。私もずいぶん気をもみましたが今はあきらめの境地です。というのは・・・

 大阪のある市の選挙管理委員会で事務方をしている若い友人から10月31日に東京で開かれるピアノコンサートに誘われています。

 入手難のチケットも夏前に手配済みで、私もホテルや飛行機の予約をすませ、晩秋の東京でフジ子・ヘミングのすばらしいピアノを聴き、ついでに上野で開催中のフェルメール展を見に行けることを楽しみにしていました。

 ところが今の流動的な政局です。投票日が10月26日なら何とかなりそうですが、11月2日とか9日では公示期間の真っ最中なのでとうていダメ。ホテルや飛行機はキャンセルできてもコンサートの高いチケットは無駄になります。
 このように有権者は投票のために多少なりとも犠牲を払っているものですが、国会議員は国民の負託に応えるだけの仕事をしているのでしょうか。岡山県民としては昨年の参院選の“姫の虎退治”の顛末が思い起こされます。
 知り合いの女性は「棄権はしたくなかった、しかし票を入れたい人もいなかったので白票を投じてきた」と言っていました。
 私は、人物に多少問題があっても政党に投票する意味合いの方が大きいので白票はあまり意味がないのではないか、と思いながら彼女の言葉を聞いていました。
 しかしながら、知り合いの女性がいかに聡明で優れた判断力の持ち主であるかが分かるまでそんなに時間はかかりませんでした。
  “姫”の本質を初めから見抜いていた彼女の炯眼をほめたたえたら、「女の敵は女よ!」との答えが返ってきました。