半年ぶりに上海に行ってきました。3月末、格安航空の春秋航空が上海・高松便を増便し週3便(日、火、木)体制にしたので、2泊3日の手軽な上海旅行ができるようになったのです。
今までも何度も上海に出かけているので目新しいことはこれといってなかったのですが、地下鉄の優先座席の表示が変わっていることに気づきました。半年前は優先座席のところに漢字でそっけなく“老・幼・病・残・孕”と書かれていました。
“老”は老人、“幼”は赤ちゃん、“病”は病人、“孕”は妊婦であることはすぐ分かります。しかし“残”とはいったい何でしょう? 驚くなかれ、身体障害者(*)のことです。この種の言葉に異常なまでに神経をとがらす日本ではとうてい考えられないような語感の言葉に唖然とします。(*最近は“身体障がい者”と書くようですが)
“残”の語源が何なのかよく知りませんが、私は老残の残を連想します。ちなみに、20代のころ初めてパリの地下鉄に乗ったとき、優先座席に“invalide”(アンバリッド)と書かれてあることに衝撃を受けたものです。パリの観光名所のひとつに“廃兵院”(アンバリッド)があります。ナポレオンの巨大な棺が置かれていますが、そこは戦争で傷ついて「価値がなくなった(invalide)」兵の残余の日々を看取る施設です。まさに“残”と同じ発想法です。
さて中国の優先座席の話。これがこのたび日本風のずいぶんおだやかなものに変身していました。“老”とか“残”の文字は消えて、老人や妊婦さんのイメージを表すピクトグラムになっていました。上海でも“老幼病残孕”はいくら何でもひどいんじゃないの、と世論が当局を動かしたのかもしれません。
ただ私は何事もあいまいにせず、おおげさなくらい単刀直入に表現する中国人の気質と言葉がきらいではありません。中国では日常会話でもものすごい単語を使っています。
朝、奥さんは亭主に「このネクタイにしたらどう?」と“建議”し、亭主は奥さんに「今日は帰りが遅くなるよ」と“告訴”。奥さんは「じゃあ私は夕方、髪型設計に行ってきますね」などと夫婦で会話しているのでしょう。建議=提案する、告訴=伝える、髪型設計=ビューティサロンほどの意味です。
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