2012年11月7日水曜日

フィギュアスケート、グランプリシリーズ中国杯観戦記


尖閣諸島国有化以降、いまだに日中の首相が国際会議の場で顔を合わせてもお互いに顔をそむけるという異常事態が続くなか、3泊4日の上海旅行に出かけました。

出発前の心配は無用でした。町はいたって平穏、地下鉄やバスに乗ると「ご老体、こちらへどうぞ」と何度もしつこく席を譲られました。日本より若者が多い中国では白髪薄毛の私はりっぱな老人です。

滞在中、思いがけない幸運に恵まれました。フィギュア・スケートのグランプリシリーズ、中国杯の開催とぶつかったのです。高橋大輔、浅田真央、男子シングルで優勝した町田樹(たつき)らの華麗な演技をVIP席から観戦できました。

 VIP席というのは何も私が要人というわけではなく単にリンクに一番近いセクションの名称にすぎません。一般席とVIP席の境には警備員がいて安いチケットでVIP席に侵入してくる観客を阻止しているのですが、そこは中国のこと、トイレから帰ってくるともう見知らぬおっちゃんがデンと座っています。

 「そこは私の席ですけど」と言うと、彼らは他の空いている席を指さして、「おまえがそっちに座ればいいじゃないか、いちいちうるさいこと言うな」と逆切れ。

 こういう場面では現地駐在日本人奥様族はあっぱれでした。私のすぐ前の列の上海マダムは、自分の席を占拠していた不法侵入者を優雅なあご先とにらみだけで撃退、ひとことも発することなくです。

そしてすぐに奥床しい笑顔に戻り隣席の日本からの追っかけファンに「真央ちゃん、かわいいわね、オホホホホホ」と口元に手を寄せてささやきかけていました。一連の仕草は優美かつ毅然としていて、生き馬の目を抜く上海社会にみごとに適応しているようすがうかがえました。

中国人観客の多くが大ちゃんや真央ちゃんの熱狂的なファンで、日本式にDai-chan, Mao-chanと呼ぶのがクール。真央ちゃんの演技が終わるやいなやぼうだいな数のぬいぐるみや花束がリンクに投げ込まれました。

すぐにちびっ子スケーターたちが回収にかかるのですが、舞台裏を見下ろしていると、そうした贈り物はいきなりゴミ袋へ。黒のポリ袋のまま選手に届けられるのかそのまま捨てられるのか知りませんが、こういうところがいかにも中国的でした。

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