パーキンソン病と認知症をわずらい、数年前からすっかり寝たきりになってしまった93歳の母ですが、それなりに健康で自宅のベッドで過ごしています。日々これといった異変がない安定した状態が続いていることは介護をする私にとって大きな励みであり安堵でもあります。
ところが先日、母の平穏を破る事件が発生しました。訪問看護師さんが母のケアをしていたとき「あっ」と驚きの声をあげました。何事かと思ったら、母の左手の人差し指から血が大量に出ていてシーツやタオルが血まみれになっていました。人差し指には傷口が2か所ありましたがそんなに大きくも深くもありません。しかし指はパンパンに腫れ出血もひどいものでした。
看護師さんはすぐに傷口を消毒し、ホームドクターに電話をかけて状況を説明し抗生剤と傷口の殺菌剤を処方してもらいました。手当をしたあと、薬の効果もあって重篤な事態になることは免れましたが、問題は寝たきりの母に傷を負わせた“犯人”がまったく不明な点です。
どんな怪物に襲われるとこんなにもひどい出血をするのか皆目見当がたちません。奇怪な流血事件は昨年兄が母のケアのため泊まっていたときにも一度起きて大騒動したことがあります。兄が言うには、目を覚まして母を見たら額から血を流していて、大量の血が枕の芯まで到達していたとか。
さてはもともと親の介護などする気がない兄が弟の私に責められていやいやながらやっていることの腹いせにDVを働いているのではないかと私はとっさに思いました。そのことを友人にしゃべったら、友人は「天井に隠しカメラを設置しろ!」とアドバイスしてくれました。
いくら何でも兄がそんなことするはずがない……とはいえ疑心暗鬼がつのります。でも正月以来兄は介護分担を一方的に放棄し、現在は私が一人で母を看ているので結果的に兄の容疑はめでたく晴れました。
真犯人はおそらく、この季節、我が物顔で部屋に侵入してくるムカデ、ヤモリ、クモ、ゴキブリのうちのどれかではないかと想像しています。近々両親を病院に預けて家中を薫蒸しようと思います。戦慄すべきは姿が見えない吸血鬼(虫)。しかしそれにもましてコワイのは兄を怪しむ私の疑心暗鬼のココロです(笑)。