学生時代、アルジェリアに滞在して初めてマルシェ(市場)に買い出しに出かけたときの感動はいまだに新鮮です。
日本の精肉屋さんと違い牛肉や羊肉が生々しくも無造作に売られているのには食欲は消滅、何か見てはいけないものを見てしまったような罪悪感にとらわれました。
切り落としたばかりの牛の頭がそのまま売られていたり羊の頭が皮を剥かれて並んでいたり、果ては羊や牛の脳味噌が高級食材としてフツウに陳列されているマルシェ。
それにひきかえ野菜売場は野菜好きの私にはワンダーランドでした。いまでこそ日本でもズッキーニはおいしい野菜として定着していますが、1970年ごろ日本ではまずお目にかかれない食材でした。アルジェリア駐在員達の多くの人がキュウリと思って買ったらとんでもないものだったなどと話していたものです。
ありそうでなかったのが日本の青ネギです。宿舎で日本から送ってもらった乾麺でうどんを作るところまでは順調にいくのですが、最後に散らす青ネギがないのはまさに“画竜点睛を欠く”不満でした。
しかしネギらしきものは欧米にもちゃんとあります。
英語でリーク、フランス語でポワローと言われる西洋ネギです。今ではリークは岡山の特産らしく直径が5センチぐらいの立派なものがスーパーで売られていることがあります。
このポワローは青ネギの代用品としては全然つまらないものですが、かつてフランスで食べたネギ料理のおいしかったこと!世の中にこんな美味な食材があったのかと驚きました。
40年前、フランスの寝台列車の食堂車で出された絶品マリネを凌駕するネギ料理が食べられるレストランを私は不幸にして知りません。フランスではポワローのことを“貧乏人のアスパラガス”というそうですが、それではポワローがかわいそう。
じゃあ本物のアスパラガスはというと、これはスペインのアランフェスで採れるものがつとに有名。アランフェス協奏曲の“タララー、タララタラタラタララー、タタタ、タタタ……”という哀愁を帯びたギターの楽の音が頭をよぎるあの曲です。
今は昔、両親を連れてそのアランフェスでホワイトアスパラガスをいただいたことがあります。味はフランスのネギのマリネに負けていましたが、親子3人で訪れたスペインのなつかしい思い出です。
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