先日上京したとき上野の東京都美術館で開催中のターナー展を見ました。チケットを買うために美術館の窓口に並んだとき“事件”が発生しました。
窓口は1,2,3,4と4列分(5列?)ぐらいあるのですが、開いていたのは2と3の二つでそれぞれ相当長い行列ができていました。3番窓口の列に並んで、あと5,6人で買えるというときになって、係員が「1番窓口を開けますので、前の人から全体的に右(1番)方向にずれてください」と言いました。
右の列の人が1番にずれたので隙間ができ私は2番列に「流れた」のですが、すると同じぐらいの年代のオバハンが「割り込みしないで!」と後ろから大きな声で怒るのです。ムカッときて(大人気ないことです)、オバハンに「割り込みちゃうわ、あんた、係りの指示ぃ聞かなんだん?」と言い返したものの、「そないなこと言われなあかんのなら元の列に戻るわ、ほんま腹立つ!」と言って3番に。そしてオバハンを見たら何とオバハンは1番の列に流れてもうチケットを購入しているではありませんか。殺意を感じたわ。
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ターナーはジョン・コンスタブルと並んでイギリスを代表する画家で、風景画や嵐に翻弄される船の絵なんかが日本人の嗜好にあいファンが多いと思います。1970年代初めにロンドンのテート・
ギャラリーを訪ねたときはお客もほとんどいなくてゆっくり鑑賞できました。宗教画にいささか食傷気味になっていたので、ターナーやコンスタブルの風景画にほっとしたものです。その後テート・ギャラリーはテート・ブリテンとテート・モダンに別れました。ナショナル・ギャラリーを含め入館料無料でした。今でも無料のようです。文化大国ですね。
そんなことを思い出しながら絵を見ていたら先ほどのオバハンとのバトルが悲しくなってわずか15分で都立美術館を後にしました。ターナー展としては空前の規模なので見応えがありましたが、他の英国画家の傑作も少し混ぜてくれていたらいいのになと思いました。(12月18日まで開催中)
2013年12月15日日曜日
2013年12月14日土曜日
中学生の社会体験
夫婦で高級メロンを通年栽培している河口君は小学校の同級生です。朝10時半ごろ、私が両親の朝の介護を終えていつもの喫茶店に休憩に行くと、河口君夫妻も温室での重労働からリフレッシュするためにコーヒーを飲みにやってきます。
幼なじみとたわいのない話で盛り上がるのは楽しいものですが、お互い65歳を過ぎればパッとした話題はなく、やれ介護に疲れただの重油価格が高騰し大変だのと愚痴の披露合戦になるのは致し方ありません。
ところが先日喫茶店に入ったら大きな丸テーブルに河口夫婦と中学生の男の子2人が座っていました。聞いてみると今時の中学校のカリキュラムにはいろんな職場で社会体験をする科目があるらしく、この中学生たちはメロン栽培農家での体験学習を希望したとのことでした。
私も同じテーブルに着いたもののふだん中学生と話す機会がなく何をしゃべったらいいのかドギマギしました。彼らはクリームがたっぷり乗ったカフェラテを飲んでいたのですが、ふと思って「君たち、この店のケーキはとびっきりおいしいよ、オジサンがおごってあげるけどどのケーキがいい?」と声をかけたら素直にチョコレートケーキをリクエストしました。
手作りのチョコケーキを一口食べた途端中学生は「ウメー!」と感嘆の声を発し、一瞬にして大きなケーキが皿から消えました。私たち大人は飲み物だけ飲んでいたのですが、喫茶店のマドモアゼルが気を効かせて我々にもハーフサイズのチョコレートケーキを出してくれました。
まだ食べ足りなさそうな中学生の前でケーキを食べるのは酷かなと思い「これも食べる?」と聞いたら「はいッ!」と答えてパクリ。私はと言えば中学生の4倍もの年月を生きてきて今やケーキぐらいじゃ感動できない体質になってしまった……。
中学生たちは4日間、温室のガラス掃除などいろいろ体験し、毎日高級メロンを腹一杯食べさせてもらって大満足で社会体験を終えたそうです。中学生たちのお世話から解放されて河口君夫婦もやれやれだったようですが話には続きがありました。
何とその中学生たちは実習はもう終わったのに後日自主的に手伝いに(遊びに?)きてメロンを食べて帰ったそうです。彼らにはとてもオイシイ社会体験だったようです。
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初冬の日光
暮れに東京まで出かけたついでに栃木県日光を訪ねてみました。学生時代に一度行ったことがありますが、有名な陽明門も華厳の滝も何ひとつ記憶になく、初めての観光地に出かけるようなわくわくした気持ちで東武鉄道の特急電車に乗りました。
日光駅に到着したとき金髪の白人青年が地図を見ながら思案顔をしていたので話しかけてみました。大学生のヴィタリー君、極東ロシアからきたそうです。東京にマリコという彼女がいるそうで、マリコさんは仕事があるので昼間一人で鎌倉や日光を観光しているとのことでした。
“旅は道連れ”、いっしょに日光東照宮、華厳の滝、中禅寺湖を巡ることにしました。ロシア人青年がきらびやかな陽明門を見たら腰を抜かすかな、などと思いつつ東照宮に到着。しかし何たるチア!陽明門は6年に渡る大修理が始まったばかりで白いシートに覆われていました。でも他の建造物も東洋のバロックの名に恥じない華麗な装飾が施してあって2人とも大満足でした。
華厳の滝を見たあとそば屋に入り親子丼を注文。西洋人は取っ手がついたカップ以外の食器は決してテーブルから持ち上げてはならないとしつけられているので、テーブルの上の親子丼相手に箸で格闘しています。ここは日本式食べ方の手本を示さなくちゃ。「こうやってどんぶりを手に持って箸でかき込むんだよ」。「あっ、本当。とてもおいしい」と感激してくれました。
“マリコはいつも「ダメダメ、恥ずかしい」と言うんだ。なぜ日本の女の子はみんな抵抗してみせるの?”と、どんぶりをかき込みながらロシア人青年がたずねてきます。どうやら公園など人前でキスしようとするとかなり抵抗されるらしいのです。
いちいちの段階でダメダメと言うくせに結局は拒絶しない大和なでしこ特有の振る舞いは日本で遊んでいる外国人には有名な話ですが、日本滞在2週間のヴィタリー君には謎であり新鮮な驚きだったようです。
そんなたわいもない話をしながら中禅寺湖の渚を散策していたらあっという間に夕日が男体山に沈んでいきました。神々しいまでに美しい光景でした。別れる前に私が日光は気に入ったかとたずねたらロシア語で「オーチン・ハラショ!」と答えていました。ロシア人青年にとっても日光は大変結構だったようです。
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