2014年2月23日日曜日

オペラの魅力(2)


 ヴィア・レッジョはイタリア半島の北西にある海辺の町です。近くには有名なピサの斜塔があり、フィレンツェもそう遠くありません。そんな町に住んでいるスカラ座で出会った大学生たちに会いに行きました。

ヨーロッパを旅行していると列車のコンパートメントや観光地でいろんな国の人と知り合いになります。「どこから来たの?」、「学生?」などと話がはずみ、気が合えば「きっと遊びにおいでよ」と誘ってくれます。日本の「お近くにおいでの際は是非……」というあいさつと違って本当に行っても相手を当惑させることはありません。大歓迎です。

ピサ大学で美学を専攻しているサンドロは丘の中腹にある古いお屋敷に両親と妹の4人で暮らしていました。特別お金持ちというわけではなさそうでしたが家には馬が1頭いたし、小さいながらプールもあり、丘には自前のオリーブ園やブドウ畑がひろがっていました。

季節は8月、庭のイチジクがようやく熟れ始めるころでした。午前中は遅い朝食をゆっくり食べ、昼からは海水浴です。私は水泳は不得意でしたが、そのころNHK教育テレビが毎年「木原光知子の母と子の夏休み水泳教室(だったかな?)」という番組をやっていました。木原さんは「足をバタつかせない、そう、足をまっすぐ伸ばしたまま大きく動かして、ハイッ!」とクロールの足裁きを指導していました。彼女は指導者としても天才でしたね。(私は木原さんと同学年でした)

さて、海辺では東洋人の私に興味津々の小さな子どもたちに取り囲まれ、にわか水泳コーチになりました。「足をバタバタさせないで、ひざを伸ばしたまま大きくゆっくりと、そう、こんなふうに!」。コツが分かって急に泳ぎがうまくなったイタリア人の子どもたちに私は大人気でした。水泳の後も「日本語を教えて、空手を教えて」と放してくれません。空手なんて全然できないのにね。
次の日だったか、その次の日だったか、サンドロたちとプッチーニが終生過ごした湖のほとりにある別荘まで自転車で出かけました。道路交通が日本と左右逆で、向かってくる自転車を避けるのに私はつい本能的に左に避けたら相手もどんどん左側に。「コンタディーノ!」と罵声を浴びせかけられました。「この田舎もん!」。(次号に続く)

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