2015年7月29日水曜日

電気柵感電事件に思う


伊豆の山中で、不法に設置された動物避けの電気柵に触れて死傷した2組のご家族のニュースを聞いてあらためて電気の恐ろしさを見せつけられた思いがしました。
感電事故にあった家族はなぜあの場所に近づいたのか報道ではよく分かりません。そこで私の推測です。ひょっとすると川面に瀕死の魚が浮いていてその光景に子どもたちが興味をそそられ川に向かって突進したのではないか、そんな気がします。
なぜそんなことを想像するかと言えば、私が7,8歳の子どもだった昭和30年前後のことですが、近所のちょっと年かさのお兄さんたちが電気で小川の魚を捕っていたのを思い出すからです。
小川のそばで自転車の燈火用の発電機に電線をつないで電線の端を川の水の中に入れます。昔の自転車の発電機は後輪に取り付けられていたのでスタンドを立て、自転車にまたがって後輪を回して発電することができたのです。
ペダルをぶんぶんこぐと驚くなかれ、川面にフナや“ハエ”と呼んでいたスマートな小魚などがいっぱいプカーっと浮いてきます。そこを網で一気にすくい取るのです。
でも、これもあいまいな記憶ですが、こんな素朴な電気ショック式魚取りも子どもたちのあいだでは違法という共通認識があり、おおっぴらにやるのはまずい、お巡りさんに見つかったらただではすまないという戒めがあったような気がします。子どもたちはこうして電気は水中を流れフナやコイを殺す恐ろしい力があることを学んでいきました。
自転車の12ボルト程度の電気でも十分恐ろしいのに今回の違法事例ではトランスで400ボルト以上にも昇圧していたと報道されています。過失の大きさははかりしれません。 
夏休みに自然に触れようと山や海に出かける子どもたちは、美しい自然の中にもこんな理不尽なワナがいたるところに仕掛けられていることにもっと敏感にならなければなりません。浮いている魚の背後には農薬散布とか漏電などとにかく危険な背後があることを予想してほしいです。

ついでながら牧場などを訪れたときまちがっても電気柵におしっこをひっかけてはいけません。塩分を多く含んだおしっこを伝って高圧電流に直撃され、あられもないかっこうで失神します。(たぶん……)

走れ、トンカツ隊員


先日テレビ朝日系列でやっていた「世界警察捜査網」というドキュメンタリー番組を見て久々に笑い転げました。新宿歌舞伎町や大阪ミナミの治安維持に活躍する警察ドキュメンタリーの延長線上の番組のようですが、日本ではとかく“正義対悪”という平板な展開になります。ところが韓国の警察は違いました。
まず体重120キロの巨漢警察官はみずからを「トンカツ隊員」と称して大活躍。不審者がドアを激しくたたく音におびえた若い女性のせっぱ詰まった助けを求める電話にトンカツ隊員たちは女性のマンションに駆けつけます。頑丈なドアの取っ手は無惨に引きちぎられノックにも応答がありません。壊れたドアが開き、中に踏み込んだトンカツ隊員が目にしたものは?
 上半身裸で赤ん坊にミルクをあげている若い男の姿!?でした。「嫁が赤ん坊のめんどうをみないからオレがミルクをやってるんだ」。隣の部屋にいた妻に事情を聞くと、「夫が夜遅く酔っぱらって帰ってきたのでドアの鍵をかけて入らせないようにしたらドアを壊した」などと恐怖を語るのですが、これってお笑いかヤラセかと思うぐらい日本人の想像力を超越した展開です。夫を不審者といって警察に通報する妻も妻なら素手でドアノブを引きちぎって部屋に入って赤ちゃんに授乳する亭主にも驚かされます。
 タイの麻薬取り締まりで活躍するスッポン隊長。食らいついたらゴールデントライアングルの山奥まで麻薬密売グループを追いつめます。第一段階として町中の売人を逮捕。スッポン隊長は刑の軽減を餌に仕入先の男の情報を簡単に入手、捕獲した仕入先の男もあっさり元売りの居場所を白状。そしてジャングルのような山道の奥にある元売り一味のアジトを急襲します。アジトでくつろぐ3人の若い男たちはチンピラ。本命の親分はいずこに?

 子分たちが指さす先に親分発見! 親分はアジトの隣の畑で一人せっせと農作業に汗していました。この若いミャンマー人親分も簡単に逮捕され、スッポン隊長の麻薬取締り作戦はひとまず完了。「世界警察捜査網」はおおよそこんな感じのドキュメンタリーでした。日本も江戸時代までは井原西鶴が描写したようにおもしろい国だったのに、今は清く正しく、つまらない国に成り果てました。

新幹線内焼身自殺事件


 開業以来50年もの長い歳月を死亡事故なしで運行してきた日本の新幹線ですが、安全神話が文字通り神話でしかないことを痛感させられる事件が起きてしまいました。
1人の乗客が高速走行中の車内でガソリンを被って焼身自殺し、巻き添えになった女性が1人亡くなり、そのほかにも大勢の乗客が重軽傷を負い、また日本の大動脈が4時間近くマヒしてしまいました。
 この先、鉄道の安全をどのように担保していくのか、ワイドショーでは識者があれこれ問題点や諸外国の例を示して解説していますが、鉄道運行者にとっても乗客にとっても今後うっとうしい事態になることは仕方ないことかもしれません。
しかし中国で行われているような徹底したチェックは中国だからこそやれるシステムであって、過密スケジュールの新幹線ではとうてい無理であり、またテロや車内焼身自殺などという予想を超えた事態を抑止することはだれにもできません。
では、性善説にたった日本の新幹線に乗るときどうしたらいいのでしょう? 飛行機にも墜落時に前の席がいいとか後ろ寄りがいいとかの説がありますが、列車の場合は後ろの車両に乗車するのがいいのはあきらかです。これまでニュースで見てきた日本や外国の列車事故でもたいてい後方の車両は線路の上に留まっています。
 今回の事件で近くに乗り合わせた人の証言では焼身自殺した人の身なりや挙動は相当不審なものがあったようです。ところが現在の日本の風潮では近くの人がいくら不審に思えても見知らぬ人に話かけたり問い詰めることはできません。
他人に「あなた、ポリタンクなんか下げて不審ですね。いったい何を企んでいるのですか?」などと声をかけてはなりません。まちがいなく倍返しされて警察ざたになります。
 こういう場合はそっと逃げること。今回のケースでも指定席のある4号車まで逃げていれば相当安全度が高まったはず。もちろん千回に1回も「逃げた甲斐があった」ということにはならないし、家族からは不安神経症だとバカにされるでしょうが。

 我々シニアにとっていちばんいいのは東京往復なら新幹線より安く、いつでも使えるシニア割で飛行機に乗るのが一番。セキュリティ対策だけはばっちりです。

「その男ゾルバ」


1964年に公開された映画「その男ゾルバ」の英語タイトルは“Zorba the Greek”(ギリシャ人ゾルバ)となっています。封切り当時私は高校生だったので受験勉強が忙しく話題の名作を見逃してしまいました。
こうした心に引っかかったままの映画が今ではDVDとなりクリックひとつでたちまち自宅に届けられる夢のような時代になりました。「その男ゾルバ」の神髄は、すべてを失い何もかもうまくいかず絶望の淵に立たされたときなお軽快なリズムでステップを踏む……その男ゾルバすなわちギリシャ人の強さ、とでもいいましょうか。
2015年の夏、ギリシャという国そのものが破綻の淵に立ちヨーロッパだけでなく世界中を不安におとしいれています。しかし当事者の中でもキーパーソンのチプラス首相は、苦虫をかみつぶしたような不機嫌なドイツのメルケル首相などとは対照的に満面の笑みをたたえています。
チプラス政権を支えているのはEUが押しつけようとしている緊縮財政案にNoを突きつけた民衆の人生観そのもの。有権者の6割はゾルバのように浜辺で歌って踊ってことの成り行きを他人事のように眺めています。
「その男ゾルバ」の中でとても印象的なシーンがあります。島の小さな村。ゾルバと懇ろになった老マダム(フランス人で元娼婦、今は村でホテルを経営)が死の床についています。すると村中の年寄りがマダムのホテルの回りに集まってマダムの死をいまかいまかと待っています。
そしてマダムが息を引き取った瞬間雪崩を打って家の中に押し入りありとあらゆる家具、什器、金目のものからガラクタまで一切合切略奪していきます。それが村の風習であり貧乏な村人が生き延びていく知恵なのです。歯が全部抜けた老婆が戦利品を抱えて満足げに微笑んでいる……それがマダムへの供養なのでしょう。

 今日、ギリシャは第2次大戦中にナチスドイツから受けた被害に対する戦時賠償金として36兆円支払うよう要求しています。ドイツは「バカげた話」と一蹴していますが、対応を誤ると島の老婆のようなギリシャの民衆パワーの恐ろしさを思い知らされることになるかもしれません。いったいだれがギリシャの負債問題に片を付けるのでしょう。

15年ぶりの株高


集団的自衛権をめぐって憲法の条文を無視した安倍さんの強引な政治手法に国民のあいだで不支持が拡がっています。これにひきかえ、政権発足当時はなばなしく打ち上げていたアベノミクスという言葉ですが、それをあまり聞かなくなったこのごろ株価は順調に上昇し日経平均は21,000円に近づいています。
ギリシャ情勢が一服し、日中、日韓関係も安倍さんの粘り強さが功を奏して何とか対話できる状況が生まれてきつつあり、また円安も手伝って海外から資金が流入しやすくなっているようです。一方景気の過熱感はなく消費支出は抑えられたままで、結局お金の行き場は株式市場しかないということなのかもしれません。
こんなけっこうな時代にありながら、学生時代から一貫して株を買うのを趣味としている私なのに、自分のポートフォリオを眺めてみるとつくづく株はあまのじゃくという気がします。「買えば下がる、売れば上がる」。これが長い投資歴を通じて学んだ株の本質のすべてです。
ところで中高年男性をターゲットにした「シアリス」という保険適用外のありがたいお薬があります。いっとき社会現象として話題になったバイ○○ラの仲間ですが、シアリスの方は昨年4月、前立腺肥大症患者向けにザルティアという薬剤名で保険適用になりました。薬品名が異なるのは用途によって薬価が全然違うからで薬剤の成分は同じです。
私はピンときました。この薬の発売元である日本新薬は“買い”であると。ほとんどの高齢男性が罹る前立腺肥大症治療薬として先発の薬に見られるある種困った副作用がないのは朗報。そして世の中には高価なシアリスの代わりに保険適用のザルティアを求めるけしからぬ輩が多いだろうと予想されます。(ただし専門医による前立腺肥大症の確定診断がないと保険がきかない。硝酸剤との併用禁止)
結果、2013年の初めにはそれまで1,000円だった日本新薬の株価は2014年には2,000円に、そして現在4,000円前後になっています。私なりの戦略的見通しどおりに株価は上がりました。
でも私は上がり続けるチャートをこの2年、毎日苦々しく追ってきました。そしてかみしめています。

「買ってない株は1円の損も利益ももたらさない」と。