“舞踏”は日本発祥の身体芸術ジャンルのひとつです。欧米ではButoという名のもとに評価が確立しているのに対し、本家の日本では「なにやら、よく分からない、怖い」などというのが一般的な受け止め方ではないでしょうか。
実際、舞台を見るとおどろおどろしいメイクアップと身体の不思議な動き、難解なストーリー展開、いやそもそもはっきりしたストーリーや舞台展開がないことに不条理な印象をもってしまうのも事実です。けれどもそこが舞踏の奥深い魅力であるし、異空間、異次元の世界に入り込んだような錯覚を覚えるみなもとであるとも言えるのではないかと思います。
前置きが長くなりましたが、長年フランスを始めヨーロッパ各地の芸術祭で活躍してきた舞踏家・古関すまこさんが、この夏故郷の岡山で舞踏の公演を行うことになりました。実はこのコラムを書いている私は古関さんとは中学校時代の同窓生で、2001年春ヨーロッパ旅行した際にフランスのパリで彼女の舞踏公演を見たことがあります。確かユネスコが主催した公演だったと思いますが、劇場は超満員で彼女のパフォーマンスに観客は総立ちで熱狂的な拍手を送っていました。
私の周りの観客の何人かは日本人の私をつかまえて「あれはどういう意味か、何かの象徴なのか?」などと熱心に尋ねてくる始末。私自身、舞踏のことなど何も知らないのに「あれは人類が共通してもっている魂の感覚、いわば宇宙的感覚なるものを視覚化したものだ」などと口から出まかせの解説をして彼らを納得させたものです(冷や汗)。
今回の岡山での公演タイトルは「ロバの夢」。醒めても醒めてもそこはいつも夢の中といった不条理な「眠り・夢・覚醒(うつつ)の関係、この不思議な意識下の世界は舞踏の世界でもある」のだそうで、それがどんなものなのかは、これを読んで下さっている読者の皆さまにはぜひともルネスホール(岡山市)で確かめていただけたらと思います。
チケットは前売りが2000円で取り置きできるそうです。学生は前売り当日ともわずか500円。当日ふらっと立ち寄ってButoの不思議な世界を覗いてください。(お問い合わせ)kikaku.on@gmail.com
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