音楽著作権管理団体として作詞家や作曲家の権利を代弁するJASRACの存在がかえって楽曲や詩を生み出すクリエーターとそれらを聞いて楽しみ感動する聴衆との日常的な心の交流を妨げているような気がします。音楽著作権管理団体はほかにもあるのですが実質的にはJASRACが業務を独占している状態です。
JASRACは著作権法が認めている正当な引用の判断基準をきびしく解釈していて、ものを書く人の創作意欲を減退させることはなはだしい。私も時代を映す演歌やはやり歌の歌詞の一節を自由に引用してブログやエッセイを書きたいのですが、JASRACからの問い合わせが来ることをおそれて歌詞の直接的な引用は避け、タイトルや歌い手の名前(これらには著作権がない)を挙げて何とか気持ちを伝えようと苦労してきました。
ところが今年の4月、天下の京都大学において山極総長が入学式式辞で昨年ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの「風に吹かれて」の英文原詩を長々と引用したことがJASRACの目に触れ、京都大学に対して「お問い合わせ」があったことがニュースになりました。山極総長は「常識にとらわれない自由な発想とはどういうことをいうのでしょうか」と問いを発し、総長が高校生時代に流行ったボブ・ディランの「blowin’in the wind」を引用、披露しました。総長の挨拶文は以下のような引用の構造をしています。具体的には京都大学のホームページを開いて、「平成29年度入学式式辞」を見ていただきたいと思います。
「風に吹かれて」の英語の歌詞が2行、その和訳が2行ずつ、結局歌詞の1番が全部掲載され、さらに2番からももう2行引用されています。正直、びっくりしました。いままで1行の半分の引用にも文句をつけていたJASRACがどう対応するのか見守っていたら、なんと理事長が京大のケースは「著作権法の『引用』と判断し(使用料は)徴収しない」と会見で表明したからです。
京大の例がJASRAC問題に風穴を開けたことになると私は信じたいです。ただこの結果がただちに作家やブロガーにとって光明となるかどうかはもう少し時間が経過しないと分かりません。またJASRACはヤマハ音楽教室に対しても使用料を求めて逆に訴訟を起こされていますが、その結果にも注目したいと思います。
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