5月末から6月初めにかけての梅雨前、晴天に恵まれた日が続きます。家庭菜園ではタマネギやニンニクの収穫適期になり、また連休中に植えたナス、キュウリ、トマトがぐんぐん大きくなる季節です。今年は3年ほど前に庭に植えたクワの木に実がたわわになり始め、手を紫に染めながら一つずつ収穫しています。ジャムにするとこれが絶品なのです。
そういえば、童謡の「赤とんぼ」にクワの実が登場しますね。
「赤とんぼ」
夕焼、小焼の、あかとんぼ
負はれて見たのは、いつの日か。
山の畑の、桑の実を、
小籠に、つんだは、まぼろしか。
十五で、姐やは、嫁にゆき、
お里の、たよりも、たえはてた。
夕やけ、小やけの、赤とんぼ。
とまっているよ、竿の先。
(三木露風作詞、大正10年、歌詞の表記にはゆれがある)
「赤とんぼ」という題名から私は長い間、季節は秋と思いこんでいたのですが、よく考えるとクワの実が熟すのはちょうど今ごろなので「あれっ?何か変」と思いました。でも歌詞の流れを追っていくと一つの年の初夏とか秋の出来事を描いたのではなく1番から4番まで歌詞をたどっていくと、そこには十数年ぐらいの歳月が流れていることがはっきりしてきました。
まだ歩くことができない幼児のころ、姐やに負われて夕焼けを見たのが1番、少年になって山の畑にクワの実を取りに行ったのが2番、そして3番は子守り奉公をしていた姐やが15歳で嫁に行ってしまった、そして4番では何とも甘酸っぱく少しさびしい記憶の流れを大人になった現在懐かしく思い出している。
三木露風のような詩人でなくてもどんな子どもも桑の実には何か郷愁を感じるのではないでしょうか。それが今や我が家の庭に何本も育ち、しかも品種改良のせいもありひとつひとつの実が大きいのです。