テレビドラマ「半沢直樹」は高い視聴率を維持しつつまもなく最終回を迎えようとしています。豪華俳優陣の確かな演技に支えられ、かつての民主党政権時代を彷彿とさせる政官界の悪霊たちに戦いを挑む正義漢の半沢を見て視聴者は例外なくスカッとする仕組みになっています。安心してドラマに没頭できるという意味では現代の水戸黄門といったところでしょう。いやストーリー展開にいろいろ想像力をかきたてさせられるという意味では水戸黄門以上です。
都市銀行の統廃合、日本航空の破産などバブル崩壊以降日本で実際に起きた、まだ記憶に新しい時代が舞台になっているだけに視聴者もドラマが絵空事ではなく自然に感情移入できる内容になっているのがミソでしょう。「半沢直樹」に関してはネット上でも大フィーバーが起きていて、人物相関を解説する人、結末を予測する記事などであふれています。予告編で辞表をたたきつける半沢の運命は?箕部幹事長は倒せるのか?
ところで、このドラマを特徴づける演出として気づいたというか気になることがひとつあります。それは半沢を始め、主要登場人物がよく怒鳴ることです。私自身は大学図書館というかなり上品な職場しか経験したことがないので、ドラマの中で役人や銀行幹部たちだけでなく半沢自身も毎度鬼の形相で怒鳴っているのが非現実めいた感じがしますが、さもありなんという体験を私も一度だけしたことがあります。
バブル時代だっと思いますが、若気の至りで、銀行の預金商品について疑問があり本店頭取宛にクレームの手紙を書いたときのことです。早々に支店長が血相を変えて私の職場にやってきて説明を始めました。全然納得できない内容だったので引き続き私の考えを主張したところ、突然支店長が切れてドラマさながら罵倒されました。本当に怖かった。密かに始末されて大阪湾に捨てられるのではないかとさえ思いました。
2020年の現在、日本の組織風土はどうなのでしょう。セクハラ、パワハラは日常化し、大学でもときおりアカハラ事件が表面化します。選良といわれる国会議員でも「このハゲーッ!」と怒鳴る女性議員がいました。「半沢直樹」は日本の企業風土に根付いている粗暴な対人関係の一面を可笑しく面白く描き切っていることも人気の秘密なのでしょう。
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