兄夫婦とはまったく馬が合わない私ですが、甥や姪はまた別です。かわいいし、どうしているのか気になるものです。コロナが収束したおかげで東京に行くのがずいぶん楽になり、この秋毎月のように2泊3日で上京しています。東京からの帰りの日、岡山行きの夕方の便までかなりの待ち時間ができたのを幸いに甥っ子を東京駅まで呼びだしてみました。土曜日で家にいました。甥は国土交通省職員で嫁さんは裁判所の書記官、子どもなしです。
子どものころからカナダに2回、ヨーロッパにも一度連れていってやりかわいがってきたつもりでも、甥っ子から見れば、私という叔父さんがどんな人物に見えているのか見当もたちません。嫌われているふうでもなく、素直に東京駅八重洲口に現れました。地方大学出身の甥より私の方が東京の街に詳しいということもあり、まずは日本橋の丸善書店に向かいました。
私の学生時代は、今のようにネットで簡単に洋書が買える時代ではなく、都内でも数少ない洋書の在庫が充実した丸善と新宿の紀伊国屋書店は私の遊び場でした。丸善は「ハヤシライス」の発祥の地とも言われ、甥っ子と店内のカフェに入りました。名物のハヤシライスを食べながらよもやま話をしていたら、甥が「明日、神戸に行くつもりだ」と言いだしびっくり。聞くと大学時代の友人がこの夏、心不全で亡くなりゼミ仲間とお墓参りに行くとのことでした。未亡人も同じゼミ生だったそうです。
私のように70歳を過ぎれば学生時代のクラスメートの訃報を聞いても「ああそうか」程度しか心が動かなくなるものです。誰が先に逝くか多少順番が入れ替わる程度の話ですが、甥の年齢ではまるでトレンディドラマのストーリーみたいです。そんな悲しい彼の話を聞きながら、何を考えているのかさっぱり分からない甥っ子にも彼なりの人生観、喜びと悲しみがあって、人生と戦っているのだなと思いました。
会計伝票が来たので、私が「叔父さん、たまには僕に払わせて下さい」という言葉を聞きたいなあ、と言ったら「たまには僕に……」というので大笑い。ハヤシライス代ぐらい叔父さんが払うので、やがて来る叔父さんの後始末だけはお願い、とたった一人しかいない甥っ子に無言で望みを託し羽田空港に向かいました。
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