ただいま牛窓にある瀬戸内市立美術館において、“無言館展 戦没画学生 魂のメッセージ”という絵画展が開催中です。第二次世界大戦戦時下、美術学校を卒業した画学生たちが学生時代や戦地で描いた絵画を収集、補修、保存、展示するため、平成9年、長野県上田市に「無言館」という名の美術館がオープンしたとのこと。今回その中から選りすぐりの作品が牛窓にやってきてここ岡山においても静かな感動の輪を広げています。
いただいたパンフレットには「将来への希望に満ちたはずの若者たち。絵筆を銃に変えざるを得なかった画学生」とのキャプションが掲げられています。この若者たちの年齢はちょうど私の両親と同じ大正6年前後の生まれで、大正デモクラシーの中で自由で豊かな教育を受けた世代です。召集された画学生たちは当時の多くの若者同様、北支やフィリピンなど南洋に送られ2度と故郷を見ることなく散っていきました。
展覧会の会場ではいろんな世代の人が熱心に絵に見入っていましたが、とりわけシニア世代の観客にとって戦没画学生は自分の伯父さん、兄弟のように感じられたのでしょう、感極まって目元をぬぐう人も見受けられました。
長野県上田市郊外にあるという「無言館」には現館主の窪島誠一郎氏が遺族の元を尋ね歩き、現在130名、約600点の作品が所蔵され今も収集は続いているそうです。牛窓の会場には絵画作品だけでなく画学生が戦地から故郷の両親に当てた遺書や手紙類も展示されています。国や時代の違いをこえて戦争で一番の犠牲になるのは若者や子どもたちであることは現在も続いているウクライナ戦争をみればよく分かります。
展示された絵画のテーマとして戦争そのものが描かれているわけではなく、むしろ大正生まれの世代のほとばしるような芸術に対する才能と感性の高さを見せつけます。彼らが戦禍に散ることがなかったら戦後の芸術界は様変わりだったのではないかと思いました。
「無言館」館長の窪島さんによる講演会は5月に実施されましたが、満席だったとのことで、美術館によれば再度講演会を行うかもしれないとのことでした。詳しくはホームページに掲載されるようです。(牛窓にて開催中、7月10日まで)
0 件のコメント:
コメントを投稿