美術館で絵画を展示する方法として、額縁を壁面に固定せず、天井付近に設置されたピクチャーレールから垂れたワイヤーに吊すやり方が随所で流行しています。絵を壁に固定しないので展示替えが自由に行えるなどメリットもあるのでしょうが、天井に向かうワイヤーの存在が気になって絵の持つ雰囲気がぶち壊しです。
高校生のころから好きだった東京のブリヂストン美術館。3年ほど前、上京した折りに寄ってみたら、そこでもピクチャーレールが導入されていました。そこでわざわざ学芸員に面会を求め、元の壁面固定方式に戻してもらえないかリクエストしたことがあります。
先週、久しぶりに上京したのでブリヂストン美術館に寄ってみたら、なんとレールが撤去されているではありませんか!美術館内部でもあの不細工なワイヤーで吊すことへの反省があったのでしょう。
若いころは作品そのものに集中できていたのに、年を取ってくると空調から漏れる雑音やまぶしすぎる照明、展示方法など作品とは直接関係ないことが何かと気になるようになりました。
老化現象かもしれません。しかしながら気になることを率直に美術館スタッフに伝えることはそう恥ずかしいことではなく、むしろ何十年も一つ美術館を愛してきた人間の責務と考えることにしています。
セザンヌの「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」が白壁にぽっかり浮かんでいます。しあわせな時間が過ぎていきます。
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