1999年、東京のある出版社社長がアメリカの著名な写真家、故ロバート・メイプルソープの写真集を輸入しようとして税関にストップをかけられました。容疑は関税定率法違反。
おもしろいのはこの写真集は社長が'94年に東京で出版したものをアメリカに持ち出し帰国の際、再び輸入しようとして没収されたもの。つまり国内で何の問題もなく売られていた写真集が通関できない(!?)というのです。
理不尽な税関の処分に対しこの男性は最高裁まで戦い抜いて、ついにこの19日「わいせつには当たらない」という判決を勝ち取りました。最高裁は以前、同じ写真を「わいせつ」と認定したけれど時代の変化に追随したかに見えます。
しかし判決を読むと問題の写真集がメイプルソープというアメリカを代表する写真家の芸術作品であったから輸入を認めたというあいまいな判断をしたに過ぎず、この問題の核心部分である、「わいせつが何故いけない?」という問いに答えていません。
さらに刑法が禁じていない個人のわいせつ図画の所有を場違いな関税定率法で取り締まるのは検閲を禁じた憲法に違反するのではないかという一番の問題点にも触れずじまい。社長の勝訴は50年遅れの一歩前進という感じです。
問題のメイプルソープの写真は男性の裸体が写っているに過ぎないもので、”わいせつ度”でいうならちまたのレンタルビデオや週刊誌のグラビアと比べるのもばかばかしい。とうてい「いたずらに性欲を刺激する」などというレベルのものではありません。
千年前に「源氏物語」というきわめて官能的かつ芸術性の高い文学を生み出した日本でありながら、現代の日本で実に低次元の取り締まりが行われています。サミット加盟国でここまで文化度が低い国はほかにありません。
2008年2月20日水曜日
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