ここ10数年日本人がノーベル賞を受賞するうれしいニュースを金木犀が香るこの時期毎年のように聞きます。ところが国をあげての大フィーバーも年が明けるころにはすっかり記憶から薄れてしまいます。白川さん、下村さん、鈴木さん、田中さん、根岸さん、小林さん…の業績は?と問われてもさっぱり。
しかし今回の山中伸弥教授の医学生理学賞は違います。湯川秀樹博士以来の大物感が漂っています。ノーベル賞が通例、功なり名とげた大家たちの過去の業績に対するオマージュとして授与されるのと異なり、山中先生のiPS細胞の研究は難病で苦しむ世界中の人々に光明をもたらす画期的かつ独創的な研究である点が評価されたのです。
第二次世界大戦が終結し焦土に茫然と立ちつくしていた日本人にとって、まだ42歳だった湯川博士のノーベル物理学賞受賞の快挙は日本人に生きる勇気と誇りを取り戻させ、これからは学問を主体とした平和な文化国家を作ろうという決意をもたらしたといいます。
山中先生の受賞はなんだか湯川博士のときと情況がよく似ています。今やGDPは中国に抜かれ第3位に転落、円高不況に加え政治も混沌。中国・韓国など周辺国とのつきあいは暗礁に乗り上げお先真っ暗の日本。
しかしインタビューに答える山中先生の研究への情熱、謙虚な姿勢、国や周囲の人すべてに感謝する気持ちの表出などを拝見しているうちに我々日本人はこれまでどおり自信をもってやっていけばいいのだということを教えられた気がしました。
日本の文教政策、学校制度に対する批判は山ほどあるのは事実ですが、とにもかくにもノーベル賞だけでなく、数学や芸術分野も含め世界的に権威ある賞を欧米一流国と肩を並べて受賞し続けている点において、日本の教育制度はそんなに間違っていないと思います。
マスコミが山中先生に受賞を知った瞬間のことを尋ねていました。「正直な話、受賞すると思っていなかった。家にいて洗濯機がガタガタと音がするので、直そうと、洗濯機の前で座り込んだ時に私の携帯電話がなった」と、どこまでもクールで控えめな方です。
「今年こそはと携帯を握りしめて待っていました」と答えてくれたら座布団1枚進呈したのですが。
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