NHKの朝ドラはときに失敗作がありますがおおむね高視聴率を取っているようです。たいていのお話は秀でた才能をもって生まれた女の子が順風満帆な人生のうちに、あるいはいじめや貧困、逆境にも負けず、戦争など幾多の困難を乗り越えて才能を開花させていくサクセスストーリーになっています。
ドラマの主人公の女性たちは必ずといっていいほど第二次大戦後の食糧難の時代に遭遇し、米や芋を求めて農村に買い出しに行きます。しかし、そんなに苦労して手に入れたサツマイモは果たしておいしかったのでしょうか? おそらく超不味い代物だったはずです。慢性的な飢餓状態にあったからこそありがたく高級着物などと交換してでも手に入れざるを得なかったのでしょう。
というのも食料増産のかけ声の元栽培されていたサツマイモは質より量で、本当にまずい品種しか作られていませんでした。子どものころ近所の農家がフットボール大のサツマイモを収穫するところを見てひとつもらって帰って食べようとしたことがあります。煮ても焼いても食えないとはまさにこのことでした。
時代は変わり、野菜や果物がどんどん美味しくなりました。「美味しい」が意味するのは「甘い」とほぼ同義で要するに食べ物が何もかも甘くなってきたのですが、とりわけサツマイモの甘さには驚かされます。
なかでも数年前に登場した鹿児島県種子島原産という安納芋の焼き芋は別格のおいしさを誇っています。今では5月ごろホームセンターで安納芋の苗まで売り出されています。凝り性の私は苗そのものも自分で作って6月に植え、つい最近1株堀り上げてみました。大成功です。大きなイモがごろごろ出てきました。
苗をどうやって作ったかというと、昨年晩秋スーパーで買った安納芋を母の寝室にあるタンスの上に置いたまま一冬越させたのです。寝たきりの母の部屋は年中室温を24,5度に保っていたのでイモも腐らず春を迎えました。初夏にイモを畑に移してやったらどんどんイモヅルを伸ばし始め、それを切り取っては畑に定植し、大豊作の晩秋を迎えました。
8月末、母は97年の長い生涯を終えましたが、母の寝室で命を繋いだ安納芋には冬をこの暖かい部屋で越させてやろうと思います。もちろん大半は私の胃の中に消えますが。
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