中学校時代の同期生だったT君が年明けまもなく逝去し、東京のご自宅近くのキリスト教会で葬儀が執り行われました。享年72歳。晩年は肝臓がん、悪性リンパ腫、そして最後は白血病と次々襲いかかってくる病魔との壮絶な戦いの様子を感情的、感傷的になることなく冷静、客観的に、同期のクラスメートで作っているメーリングリストを通じて、我々にも知らせてくれていました。
可能な限りの最先端かつ最良の治療を国立の専門病院で受けつつも昨年末には積極的な治療法が尽きて退院を余儀なくされ、自宅で緩和ケアを始めた矢先の急変でした。戦後ベビーブームに生まれた我々同世代の人間は、科学の力を素直に信じる教育を受けてきたので、T君も最後まで医学に対する信頼感を失わなかったのではないかという気がします。
葬儀の様子は前もってネット中継する旨ご遺族様からご案内があり、我々中学校時代の同級生も、それぞれの自宅において友人との別れに立ち会うことができました。コロナ禍の時代にあってはネットでの参加はリアルに列席することに負けず劣らずいいものだという気がしました。
昨今は伝統的な大勢の会葬者が列席する葬式よりもごく近しい身内だけで行う家族葬が主流になりつつあります。この方法は確かに親しい家族だけで故人とのお別れが心おきなくでき、費用も抑えられ、何よりも会葬のお礼やあいさつなど慣れない雑事に追われることから免れます。しかしその反面、家族葬は故人と親しかった友人、先輩、後輩、職場の仲良しだった人々も排除され、お別れの機会がもてないことはやはり寂しいものです。
一方、公開のネット中継では単に動画を拝見するだけというのではなく、こちらからも弔辞やメッセージを残すことができます。しかもご遺族は参列者への応対に追われることもなく、ネット参加者もリアルに列席したときと変わらない気持ちでお別れできる利点があります。今回は約100名の方々がネット中継にチャンネルを合わせていました。
こうした形の葬儀は海外では幅広く行われているようで、昨年カナダの従兄が亡くなったとき初めてその存在を知ったのですが、進取の気性に富んだT君は彼のパイオニア精神で我々クラスメートにも悲しいけれどいい時を共有させてくれた、と思います。