2022年7月12日火曜日

安倍元首相暗殺事件に思う

6月中旬に奈良を訪れ、その際に近鉄西ノ京駅のプラットホームで元総理大臣Hさんが護衛もなく電車を待っているのを至近距離から目撃した話をこのコラムでご紹介しました。日本は何て安全な国だろうというコメントとともに。Hさんとはもちろん細川護煕元首相のことです。

それからひと月もしないうちに同じく近鉄大和西大寺駅駅頭の広場で参院選の応援演説をしていた安倍元首相が手製の銃で暗殺されるという前代未聞の惨劇事件の報道に日本だけでなく世界中の人々が接することになりました。その日、私はラジオでNHKニュースを聞いていたのですが、何が起きたのか要領を得ない報道に、どうか一命だけは取り留めてほしいと願ったものです。しかしまことに残念な結果に終わりました。

今回の事件で多くの識者から指摘されていることは要人警護の拙さ、異常事態発生時の対応の悪さです。たしかに演説をする元首相の背後すれすれのところを車や自転車がすいすい通っているという何とも異様な光景が繰り返し放映されていて、素人目にもあの警護のやり方はないだろうという気がしました。

対照的に同じ元総理大臣だった細川さんがリュックサックを背負って一人で近鉄電車に乗っていたのはあらためてあれは何だったのか考えてみました。要人警護の決まりとして首相経験者には終生SPが一人付くらしいです。ところが現在、村山富市さんと細川護煕さんのお二方は「煩わしい」との理由で警護を断っているそうです。

細川さんご自身、新宿のホテルで銃撃された経験がおありだそうですが、政界を引退した後は陶芸や絵画に才能を発揮し、今回のようなきな臭い事件のターゲットになる心配はあまりないのでしょう。村山さんが率いていた社民党はもはや風前の灯火状態で村山さん自身98歳という超高齢者となった現在、お二人とも政治的には「終わった人」故に勝ち得た平穏な生活だと思います。

それに反してモリカケ、桜の決着もなかばうやむやなまま、しかもひょっとすると3度目の復活だってありえた実力者の安倍さんの場合、身辺警護は最高のレベルで対処することが求められていたはずです。警戒を緩めてもかまわないのは村山さん、細川さんレベルになってからでも遅くなかった、と残念でなりません。


2022年7月7日木曜日

生食すると危険なサヤインゲン

家庭菜園向きの野菜としてサヤインゲンは育てるメリット上々です。というのもスーパーで売っているサヤインゲンは値段が高く、量も少ないうえに鮮度もすぐに落ちます。インゲンこそ晩春から晩夏までいつでも種蒔きができるのでぜひ家庭菜園に取り入れたい野菜のひとつです。

種類は大きく分けてつるあり種とつるなし種があります。つるあり種の方が長期間次々と収穫できるのでベターなのですが、つるを誘導する支柱を設置するのがめんどう。これに対しつるなし種は低い位置で生育が止まるのでプランター栽培にも好都合です。

今年は久しぶりにつるなしの種を買って菜園で育てたところ大豊作でした。定番の食べ方はサヤインゲンのゴマ和えや肉料理の付け合わせなどでしょうか。ところでサヤインゲンによく似た豆にササゲがあります。とくにタイ料理で有名なソムタムに入れる長さ40センチぐらいあるササゲは三尺ササゲとも呼ばれ、タイでは生のまま食べます。

「未熟なササゲは生で食べられる!」いいことを知ったと思いました。サヤインゲンもソムタム風に生で食べられるのでは? 危ないところでした。サヤインゲンはササゲと異なり有毒成分であるレクチンが多量に含まれているのでサヤインゲンでもインゲン豆でも生食/不十分な加熱は厳禁とのことです。

ちょっと調べてみたら、インゲンほどではないにしても多くの植物にレクチンは広範に含まれ、その数、数千種類!グルテンもそのうちの一つとかで、生の食材に無頓着であってはいけないと思いました。動物と異なり植物は外敵の攻撃に対し、動いて逃げることができないので、簡単に食べられないようにさまざまな有毒成分で武装しているそうです。

一方、人間の知恵も大したものです。大半の有毒成分は煮たり焼いたりの加熱で活性を失うことを経験から学んできました。またアクを取ることによってワラビやコンニャクなどもおいしく食べています。

戦後の食卓に登場したサラダは、健康的なイメージと裏腹に、植物が持つさまざまな毒性分を無防備に摂取することに他なりません。戦後アトピーやアレルギーが爆発的に増えたのはそのせいでは? 昔の人が安易に生ものを食べなかったのにもそれなりの理由がありそうです。


岡山県立美術館にて

 先日の日曜日、久しぶりに県立美術館に行きました。この日が最終日だった高木聖鶴展目当てのお客でにぎわっていましたが、私が見たかったのは地下画廊で開催中の「撮影された岡山の人と風景--県内作家の近作とともに」展の方でこちらはひっそり、閑散。しかしヨーロッパの人の目に映った2001年の岡山や写真集「bridge」などローカルかつユニークなおもしろい作品が多数展示されていて、こういう企画展こそ都道府県立美術館でなければ実現できないいい展覧会だと思いました。

そのうち杉浦慶陀さんという写真家の作品は「暗く沈みこんだ森」がほの暗く写し取られた作品群で「神様の殺し方」という連番タイトルが付けられ、魂を抜かれた自然を人間の暴力性の中で捉え、見る人に深い考察をうながす力作だと感じました。ところが、展示場のパネル(説明版)の文面を読んでいて「?」と感じた箇所がありました。

--杉浦によれば「管理され、虚勢されたはずの緑の中に潜むものは—-

文脈から言って「虚勢」ではなく「去勢」であることはあきらか。山の木材は資源として利用され、山地は産業振興のため開発され、森は違法に伐採される。「自然としての山と人間は結びついていないのではないかという意識がある」、つまりは一見豊かに見える森の緑も原初の森ではなく「去勢された」森だというのが杉浦のメッセージだと思います。

一番大切なキータームである「去勢」という単語が誤変換されているのは一美術ファンとして見逃せない! 出しゃばりの私は担当の学芸員を呼び出してもらいその旨意見を述べました。学芸員氏は面倒くさそうな顔をして私の説明を聞いていましたが、「作家から受け取った文章をそのまま使ってキャプションを作ったから……」と訳の分からないことをつぶやきながらそそくさと事務室の方へ消えていきました。

 美術館は接客業ではないのかもしれないが、私のような紳士的にクレームを付ける年寄りをもっと大切にしてほしい、いや構ってほしい! 老人は知識はあるのにそれを披露する場所がない、あんたら現役世代は分刻みの忙しさかも知らんが、こちとら時間はたっぷりあって閑を持て余してんだよ! それなのに名前も携帯番号も聞かれることなく放置されてしまう。私も迷惑千万な年寄りになりました。


2022年7月4日月曜日

危うくマムシにやられるところだった

家の西側壁面が野ブドウの蔓に覆われるようになり、3日の日曜日に草刈りと野ブドウを除去。抜いた草やブドウの蔓を素手でかかえてははプラかごに入れていく。最後の山を抱えようとしたときそこに潜んでいた巨大なマムシが飛び出し側溝に逃走。奇跡的に噛まれなかった。すぐに三角ホーを持ってきてマムシを押さえつけたものの殺すのに忍びず、隣のくそ婆の方に追いたてる。 今まで家の周りや畑、田んぼでマムシに遭遇したり退治したことがトータルで10回はあるがこんなにも危機一髪の状況だったのは初めて。もしやられていたらと思うとぞっとする。