10月末、フジ子・ヘミングのピアノコンサートを聞きに東京まで行ってきました。
フジ子・ヘミングは父方がロシア・スウェーデン、母方が日本人というインターナショナルなバックグラウンドをもった生まれであり、あの北欧的な憂いを秘めつつも力強いピアノのタッチはそういうところから来ているのかもしれません。
1曲弾き終えるごとに客席から拍手と歓声がわき起こります。ところがその中にひときわ大きな胴間声で“ブラボー”と叫ぶ“変な外人”風のおっさんがいて何となくコンサート会場に不協和音が広がりました。
このおっさん、アンコール曲のラ・カンパネラ(リスト)が始まると今度は三脚に据えたカメラで写真まで取り始める始末。プロダクション関係者とも思えません。 演奏会が終わったあと会場の係員に“変な外人”のことを尋ねたら、何とフジ子さんの実弟で、「私たちも困っています」とのことでした。
岡山に帰ってからフジ子さんのプロフィールを調べたところ、弟というのは俳優の大月ウルフであることが分かりました。「必殺仕掛人」、「大鉄人」など数多くの映画やテレビで“変な外人”や神父役で活躍した人のようです。
そうだったのか!と思いました。フジ子さんは弟がコンサート会場に来るのを嫌がるどころか、多少のやんちゃは大目にみるよう主催者に因果を含めているのではないか、などと想像されました。
フジ子・ウルフ姉弟は戦時下の日本で子供時代から大人になるまでずっとひどい差別やイジメにあってきたのでしょう。そんな中で姉弟がかばいあいながら生きてきた歴史があったと思います。
美空ひばりが世間が何と言おうといつも弟に花を持たせていたことが思い起こされました。偉大なピアニスト、フジ子・ヘミングの人間としての魅力が一段と輝いてみえた夜でした。
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