この夏、竹島問題に火が付いたと思ったら、9月にはより手強い中国相手の尖閣問題炎上です。第一次大戦のきっかけもささいな事件が引き金を引いたのですが、領土問題はいつの時代でもナショナリズムを強く刺激します。地域紛争というとイギリス対アイルランド、イスラエル対パレスチナの例のように常にどこか遠い場所で起きるものと思っていたら極東で火を吹いているのですから驚きです。
最近の韓国・中国の日本に対する態度を報道で見ていると古今東西いつの時代でもどこでも起きる地域紛争の発生メカニズムと“気分”が何となく分かるような気がしてきました。売り言葉に買い言葉が飛び交い、ナショナリズムがあおり立てられます。こうなると洋上の小さな島嶼の帰属問題が双方にとって“核心的利益”を争う大問題に発展し、武力行使も辞さずという気分が醸成されていきます。
こうした国家間の対立の局面で冷静さを忘れ、まるで我が家の敷地がかすめとられたかのように怒り、ヒートアップするのは常に社会の発展段階が未熟な側です。幸か不幸か、日本人は冷静というか多くの国民は尖閣問題に対してある意味シラケているのが実状ではないでしょうか。
尖閣炎上の直接のきっかけは東京都による購入話でした。その話に多くの国民が感動し、10数億のお金を都に寄贈したのですが、島所有者は国がろくに査定もしないで即金で20億5千万出すといったらさっさと東京都との約束を反故にしました。もとはと言えば尖閣諸島は国が民間人に無償で譲渡した土地です。こんな取引話に一般国民が愛国心をかき立てられるはずがありません。
8月下旬、台湾が尖閣帰属をめぐって国際司法裁判所に提訴すると表明しました。日本政府はこの話を無視しましたが大失策です。台湾の提案こそ日本にとって(台湾にとっても)もっとも有利かつ賢明なものであったことは疑う余地がありません。
裁判を受ければ、尖閣の日本への帰属が国際社会から再確認されるだけでなく、海洋政策で拡張主義に陥っている中国に対して深刻な打撃を与えることができ、日本はベトナム、フィリピン、インドネシアから末永く感謝と尊敬の念を勝ち取ることができたでしょう。万一負けた場合、結果を受け入れるのは当然ですが。
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