中学生のとき理科の先生が我々生徒に質問しました。「味にはどんな種類がありますか?」「甘味、塩味、酸味、苦味」とクラスメートが次々答えました。そこで私の出番です。「先生、“うま味”があります」と。
先生は「うま味というのは甘味や酸味など基本的な味が組合わさったものであり、うま味などという独立した味があるわけではない」と説明されました。中学生の私は生意気にも「先生でも何でも知っているわけではない」と思ったものです。
もしうま味が甘味や酸味などの組み合わせで出せるのなら昆布や鰹節で出汁なんか取る必要などないではないか……。私は小学校時代にすでにグルタミンナトリウムを発見した池田菊苗博士(1864-1936)の伝記を何度も読んでいました。
博士は昆布のうま味成分に着目しそれが何なのか世界で初めて解明し(1907)、特許を取得、そして生まれたのが「味の素」でした。
今ではうま味はUMAMIとして世界で受け入れられています。代表的なうま味としては昆布やトマトに多く含まれるグルタミン酸、鰹節や煮干しに多いイノシン酸、シイタケのグアニル酸があります。最近まで知らなかったのですが、白菜にもグルタミン酸が多く含まれているそうです。
私は今まで白菜に対して偏見をもっていました。淡泊な食感の白菜って、キムチや白菜漬けなどにして食べる以外、見た目あまり栄養もなさそうだし、なぜ重要視されるのだろう?と。ところが湯豆腐やしゃぶしゃぶ、すき焼きに白菜を入れるのは料理にうま味を補う意味があったのですね!
さて、うま味のほかにも独立した味覚が存在しているはずですが食品科学の専門家もあまり取り上げない味覚に渋味(収斂味)があります。
日本では身近に渋柿という強烈に渋い果物があるので渋味を説明するのは簡単です。しかし「この柿はとても渋い」と言っても欧米人にはなかなか通じません。あるアメリカ人教師に“渋い”はastringentで通じるかと尋ねたら、それよりもmouth-puckeringの方がいいと言われました。なるほど! 口がへし曲がるという方が分かりやすいですね。
ところで、料理につきものの「アク」って成分は何なのでしょう?これも味同様、追求すれば奥が深そうです。
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