2018年6月7日木曜日

古関すまこさんの短歌

古関さんの著書「フランス舞踏日記」についてはxxさんがすばらしい読書感想文を書かれていました。なかなか難解な文体と内容を正確に読みとるのは困難ですが、繰り返し読んでいるうちに、文体の魅力に取り憑かれていくのを感じます。
210ページから212ページにかけて15首の短歌が「短歌日記」というタイトルのもとに掲載されています。

情緒豊かであり、(感傷的ではなく)、男性的(と言ったら怒られそうですが)、珠玉の名篇だと私には感じられました。本に掲載されたもののほかにきっと多くの短歌を作られているのではと思います。ぜひ歌集を出版してください。

ここに何首か引用してみます。

春から夏
・ブルターニュに横に降る雨夕暮れて人らクレープ焼けるを待ちをり
・空いっぱいひかりの蜜の垂るるつき五月がこつりとひとを死なせる

舞踏
・クレタにて七つ星あり白しろと波かしら寄る暗き海あり
・ボヘミアの野に満月を残し来ししづかに猫のみづを呑む音

Half
・地に生ふる根なくば爪をHalfとは二つの異境に立ち尽くすこと
・秋の日にパチンとつめ切るはさみの音 君は遠くの国を語れり

「大地をつかむ根がないのなら爪を立てよ」息子に対する母親の深い愛情と激励を感じます。

古関さん、対談のご案内

「舞踏を語る、舞踏から語る」 古関すまこ x すずき道剛
6月8日(金)夜7時から
岡山禁酒会館2階ホール
参加費 1000円

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(ついでに)

私の母も、私が学生時代に休学してアルジェリアに滞在していたとき、パリから送った絵はがきに対し、ボードレールの詩「旅のいざなひ」の一部を引用した手紙をくれたことがあります。

わが児(こ)、わが妹(いも)、
夢に見よ、かの
国に行き、ふたりして住む心地よさ。
長閑(のどか)に愛し、
愛して死なむ
君にさも似し かの国に。
                (L'Invitation au voyage 鈴木信太郎訳)
少女時代にポール・ヴァレリーやボードレールに心酔していた母は息子が「君にさも似しかの国」にいることを喜んでいたのではないかと思いました。(「かの国」がフランスなのかベルギーなのかよく分かりませんが)

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