能や歌舞伎などの伝統劇からオペラやミュージカルを含め、舞台芸術を鑑賞するのは人生の楽しみの一つです。しかしながら自分が舞台の上に立つ?!そんなことは考えるだけでも空恐ろしいし、あがり症の私は人前で演技するなんて死んでもいやと思っていました。ところが……。
ただいま3月24日まで高松市美術館で「やなぎみわ展 神話機械」という展覧会が開催中です。本個展に関連したイベントのひとつとして「機械と朗読」というワークショップがあり、私はそれがどんなものかよく分からないまま参加申し込みしました。なにしろ国内外の現代アートシーンでもっとも注目を浴びているアーティスト、やなぎみわ(1967-)さんにお会いできるチャンスはめったにないことですから。
「神話機械」というかなり大がかりな仕掛けを駆使した作品はごく簡単にいうと、古代の投石機を模した機械や怪しい光を放ちながら床の上を徘徊しつつ何やらしゃべる機械、そうかと思えば断ち切られた下半身が床に転がってくねる、およそそんなパフォーマンスです。古代の神話に登場する機械をエレクトロ・メカニズムで再現しているとも言えます。
参加人数15名に限定されたワークショップとは、こうした「神話機械」たちの演技にあわせてシェークスピアのハムレットに登場する墓堀り道化たちのセリフを朗読することでした。本番の前にまずは美術館の会議室でやなぎさんから台本を渡され、発声指導を2時間余り受けました。
朗読の経験も演技の経験もない私はたった1行のセリフでも人前でしゃべろうとすると不覚にも声はうわずり、心臓はドキドキです。参加者の中には演劇経験者やアナウンサー経験がある人もいて、そういうセミプロの人々は長いセリフを実に流暢に、かつよどみなく読み上げ実力のほどを見せつけてきます。
私はできないものは仕方がない、せめて自分に割り当てられたセリフは大きな声でゆっくりしゃべろう、と覚悟を決めました。そしていよいよ来館者が待ち受けている神話機械の展示室へ移動しました。照明が落とされ神話機械たちが不気味に動き始めました。ショーの幕開けです。
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