2022年9月20日火曜日

グリーンモンスター、クズの脅威

最近在来線の電車や高速バスで大阪までよく出かけ、スローな旅を楽しんでいます。市街地を離れるとすぐに緑豊かな田園地帯を電車やバスは走っていくのですが、一見“緑豊か”に見える道路脇や鉄道沿線、里山の緑の正体が秋の七草のひとつクズであることに驚かされます。

クズは漢字で書くと「葛」であり、むかしなじみの葛餅、葛湯などの食品として、また風邪によく効く漢方薬、葛根湯の原料として人間の生活に役立つ存在でした。ところが今では人間の怠惰がもとでクズは最凶の迷惑植物となってしまいました。

実際、空き地に廃車を捨てたり廃屋を放置したりするとすぐにどこからともなくクズが繁殖を始め、電柱があればそれによじ登り、小川をまたいでどこまでも勢力範囲を広げます。高速道路の法面など日当たりのいい場所はクズにとって理想的な繁殖地になります。かつてアメリカは荒れた表土の保全のために日本からクズを輸入したそうですが、今ではグリーンモンスターとしてやっかいもの扱いです。

アメリカでも日本でもモンスターと化したクズの退治方法はあるのでしょうか? アメリカ軍がベトナム戦争のときに使用した枯れ葉剤のような薬品を使ったとしても効果は限定的で莫大な金もかかる一方、他の動植物や環境に与えるダメージは大きく現実的ではありません。

戦前までの日本の農村風景の美しさ、手入れのよく行き届いた山野の自然の美しさは外国人の驚嘆の的でした。たしかに安藤広重の浮世絵に描かれた農村は雑草一本生えていないうっとりする美しさ。若いころ初めてスイスを旅したとき、都市も農村もアルプスの山岳地帯もどこをとっても舐めるように美しく管理されていたことに感激したものですが、かつての日本もスイスに負けない絵になる国だったと思います。

どうやったらグリーンモンスター、クズに占拠され、松林は枯れ、足の踏み場もなくなった里山を復活させることができるのか。頭をひねっても、薪炭を捨てすべての燃料を輸入に頼り、小麦や大豆、家畜の飼料のほとんどを外国から安く輸入している現状ではお先真っ暗です。ここは奄美のハブ捕獲ではないですが、刈り取ったクズを1トン焼却炉に持ち込んだらいくらかの報奨金を支払うというのはいかがでしょう。

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