2022年9月20日火曜日

エリザベス女王葬儀

「盆と正月が一緒に来たよう」というと例えとしてはまずいのですが、史上最強レベルの台風襲来とエリザベス女王の国葬があった9月19日はテレビ局にとってはそういう日であったに違いありません。おまけに台湾で大地震もあったのですが、このニュースなどすっかり片隅に追いやられてしまっていました。

台風の方はさいわい「経験したことがない」と言うほどの被害はなく、やはり注目されたのはエリザベス女王の荘厳かつ完璧な葬儀の様子でした。どの映像も伝統と格式、様式美にあふれてうっとり。かてて加えて、人々に愛された女王とのお別れに市民が親しく立ち会えるよう最大限の配慮がみられたことは羨ましくさえ感じられました。国葬までの約10日間、遺体は各地を巡回し、ロンドンでは24時間だれでもお通夜に参加できたことは驚きでした。

ウェストミンスター寺院での国葬の後、最終的に安置されるウィンザー城までの長い沿道でも葬列はゆっくり進み、そこでも多くの国民が花一輪、最後の献花をすることが許されていました。さすがはイギリス、伝統と格式に留まらず王室と国民の距離が近いと感じました。私も若いころロンドンに行ったことがありますが、そのとき一番驚いたのがバッキンガム宮殿のたたずまい。堀や森で隔離され、隠された皇居と異なり、「この壁のすぐ内側に女王がおられる」という圧倒的な近しさでした。実際はどうか知りませんが、とにかく王室と国民の距離が近い。日本の皇室の儀式はともすれば政界関係者と外国要人のために存在しているかのような印象が強く、「一般国民はテレビでも見ていなさい」というのは何とかならないものでしょうか。

エリザベス女王の国葬で感じたもうひとつのことは、国王の葬儀であれ庶民の葬儀であれ、キリスト教の葬式は分かりやすく、遺族はしみじみ心が癒されるセレモニーだということ。難解な仏式に比べ、分かりやすい説教のあいまにみんなで賛美歌を歌い、澄み切った気持ちで故人とお別れできるのが何よりいい。

イギリスの公共放送BBCの中継スタンスも立派でした。ひたすら儀式の進行と遺族の姿に焦点を当て、バイデン米大統領等各国要人の映像はいっさい流しませんでした。やるじゃないかジョン・ブル! 誇りと気骨がありますねえ。

0 件のコメント: