今回の東日本大震災は世界中の人々に衝撃を与えました。特に福島原発に関しては大気中や海に放出した放射能汚染物質がアメリカをはじめ各地に拡散している証拠結果が出てきて、彼らは効果的な対策がとれない日本に対し大変危惧し、また不信感を増大させています。
外国のなかでもとりわけ神経をとがらせているのはアメリカ、フランス、ロシア、中国などの核大国です。いずれの国も第2次大戦終了直後から1960年代にかけて原爆や水爆実験を繰り返した国であり、特に米国とロシアは悲惨な原発事故を経験しています。
そうした国々が今回の事故を当事国の日本以上に深刻に受け止めているのはおそらく彼らは原爆実験や原発事故の本当の恐ろしさを知っているからではないでしょうか。つまり直接の被害だけでなくその後何十年と追跡調査した結果出てきた恐るべき被害実態に照らし合わせて福島の現在と将来をきわめて悲観的に捉えているからに相違ありません。
一方、日本政府は水や農産物から検出される放射能、大気中の放射能数値に対して「ただちに健康に影響する数値ではない」という決まり文句をこだまのように繰り返し、われわれもなんとなく痛くもかゆくもない放射能汚染を「大したことはない」と思いこんでいます。
4月最初の終末、鎌倉と東京に出かけました。桜やボタンが満開になるなか、初夏のような古都鎌倉の参詣道を歩いていたら素敵なカフェが見つかりました。カフェで出された涼しげな水を飲んだらたちまち「水道水に些少の放射能毒が入っていてもどうってことはない」という心境になりました。
新宿や渋谷は相変わらずのにぎわいでした。ただ街が暗く駅のエスカレーターが休止しているのが多少不便なくらい。要するに東京では日常生活が営まれているのですが、今でも多くの国の大使館は関西に疎開したままだし、鎌倉でも東京でも外国人観光客が少ないことに、彼我の原発事故に対する温度差を感じます。
「今すぐ岡山からドイツに引っ越してこい」と心配してくれるドイツの友人には「西日本は大丈夫、Im Westen nichts Neues(西部戦線異状なし)だよ」と返事を書きました。彼らには日本人はカチカチ山の狸に見えているに違いありません。
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