外国に出かけると私はひまさえあれば現地のデパートやスーパーの食品売場を見て回ります。50年前、初めてヨーロッパを旅したとき、当時の日本に比べ野菜、果物、食肉、加工食品等、彼の地の食品の質の高さと種類の多さに驚いたものです。
その後日本でも海外のオレンジや熱帯産の果物がどんどん解禁され、食の欧風化もあってワインやチーズ、パスタも昔とは比べものにならないくらいいいものが手に入るようになりました。逆にかつてヨーロッパの食品売場では目にすることのなかったかまぼこ(sourimi)、豆腐、椎茸、エノキタケなどの日本食材がどこでも日本名のまま売られるようになりました。食のグローバル化はこれからもどんどん進んでいくでしょう。
それでも私が依然として外国に比べて日本が貧弱だなあと思うのはハム、ベーコン、パテなど加工食肉製品の分野です。こんなことを言うと日本でもおいしいハムやソーセージが売られているではないかとお叱りを受けそうですが、やはりヨーロッパ各国の特産地域名を冠した商品に比べると味が単調な気がします。
デパートの輸入食材コーナーはどうかというとイタリアのハムなどあるにはあるけれど品揃えが貧弱なうえに高価で、同じ加工食品でも日本各地から入荷する魚介塩干物の豊かさとは著しい対比をなしています。
いったいなぜ日本では地域に根ざした食肉加工品が発達しなかったのでしょう。明治時代になって突然日本人が肉を食べるようになったとき、食肉加工品の製造、販売は大手業者が独占し、地場の小規模かつ特色ある店が育つだけの時間がなかったという歴史的背景が考えられます。
一方、豆腐や味噌、醤油、酒などを作る商店は江戸の昔からどんな小さな町にも1軒や2軒はあり、地方色豊かな商品が地域の人々に届けられてきました。ちょうどヨーロッパで町ごとに自慢のハムやチーズ、ワインが競っているように。
しかしうれしいことに近年岡山県下でも志ある個人や自治体、農業高校の畜産科などがローカルで高品質なチーズ、ハム、ベーコンを作ってレストランに納品したり、また道の駅などで販売するようになってきました。手間ひまかけて作られた本物志向のベーコンは弱火で気長に焼くとカリカリになりいいにおいがして食欲が沸き、朝から元気がでます。
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