昔は個人や小さなグループがお店など始めようと思ったときは、まずは自己資金を貯め、親をくどき、さらには信用金庫や銀行に融資をお願いするのが王道でした。しかしリスクを取ることに慎重な金融機関から満足な担保もない人が事業資金を借りることなどほとんど不可能でした。
ところが最近日本でも着実に拡がってきているのがクラウドファンディングです。自主映画の製作と公開、大手メーカーでは作れない個性豊かな服を世界市場で販売したい、ヤギを飼って本格的なチーズを作りたい……と、かつては文字通り夢まぼろしに終わりがちだった若者の夢を銀行や親に平身低頭することなく実現させる手段がついに登場したのです。
この画期的な資金調達手段は国の施設でも活用されています。上野公園にある国立西洋美術館では2019年6月11日から9月23日まで「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」が開催されます。同展では近年偶然発見されたモネの幻の大作「睡蓮、柳の反映」が修復のうえ展示されます。莫大な修復費用の一部として、同館は本年3月にクラウドファンディングを立ち上げました。目標額は300万円とのことで、とうてい大規模修復をまかなう額ではないのですが、西洋美術館としては国の予算がひっ迫するなか、国民に直接サポートを訴える試みを始めたということのようです。
この企画を知った私はその場で寄付の申し出をしました。コメント欄があったので「いつも常設展をシニア無料観覧させていただいているお礼に代えて」と書き込んだところ、定型のお礼のメールの文中に「いつも無料常設展を見て下さって、そのお礼にと……素敵です」と、お堅い国立施設からのものとは想像できない心温まるメッセージを忍ばせてくれました。好感度↗
支援総額は3,632,000円、346人からの支援があったそうです。返礼品として松方コレクション展のチケット2枚が送られてきました。ちなみに最高額の30万円寄贈した人に対する返礼は?何と馬渕明子館長(71)とのランチ!だそう。口の悪い大阪の友人にそのことを話したら、「オレはそんな罰ゲームいやだ!」と罰当たりなことを言っていました。ともかく西洋美術館の初の試みは目標額達成率121%と大成功、早い機会にモネの大作に会いたいと思います。
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