2010年10月29日金曜日

夏の食卓

 
 今年の夏の暑さは異常です。食欲も落ち夏バテになり何の苦労もしないで自然にダイエットできるかというとそうはうまくいきません。連日の猛暑にバンコクの屋台料理の刺激的な匂いが思い起こされ、猛烈にタイ料理が食べたくなりました。自作の激辛タイ料理に食欲は増進するばかりです。

 タイの有名な料理にソムタムというパパイヤ・サラダがあります。未熟なパパイヤを千切りにしたものやトマトなどの野菜を独特のドレッシングで和えたサラダです。

 作り方は簡単。すり鉢に落花生、ニンニク、トウガラシを入れてすりこぎでたたき潰し、ナンプラー、砂糖、マナオ(すだち)の果汁を適当に入れてパパイヤの千切り、トマト、刻んだササゲをミックスするだけ。

 ササゲというのは正式にはジュウロクササゲというらしいのですが、岡山では昔から“フロウ”と呼び、お盆のときにハスの葉の上にナスやキュウリといっしょにお供えする野菜です。長さが30cmぐらいあります。

 このササゲはおそらくかなりの高齢の人しか知らない食材で煮てもあまりおいしくなく、スーパーでもほとんど見かけませんが、お盆のこの時期だけ例外的に近所のマルナカの店頭にも毎日3把ほど並びます。

 ササゲを生のまま刻んでサラダにして食べることを思いついた東南アジアの人々は天才です。ソムタムにすると青臭い豆が妙に動物性食品めいたコクを帯び激しく食欲を刺激します。きっと辛、酸、甘が絶妙に調和したドレッシングがササゲに魔法をかけているのだと思います。

 さて話を台所に戻し、実際にソムタムを作るときの工夫をご紹介しましょう。入手難の青パパイヤの代わりに私は“そうめん瓜”を使います。固めに茹でたそうめん瓜の肉質は何となく青パパイヤに似ています。またマナオ(タイのすだち)の代わりにはライムを。それも面倒なら普通の食酢でOKです。トウガラシの代わりに豆板醤を大匙1杯入れてもすばらしい辛みが出ます。調味料の比率はすべて同量で、お好みにあわせて加減を。

 50年来、私にとって摩訶不思議な食材であったササゲの唯一の正しい食べ方をタイで発見し、タイの食の奥深さにあらためて感動する夏の食卓です。

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