「そぞろ歩き」アルチュール・ランボー、永井荷風訳
蒼き夏の夜や
麦の香に酔い、野草を踏みて
小道を行かば
心は夢み、わが足さわやかに
わがあらわなる額、
吹く風に浴みすべし。
われ語らず、われ思わず
われただ限りなき愛
魂の底に湧き出るを覚ゆべし。
宿なき人のごとく
いや遠くわれは歩まん
恋人と行く如く心うれしく
「自然」と共にわれは歩まん。
ランボーの詩のなかで一番好きなのがこの「そぞろ歩き」。原題はSensation なので「感覚」と訳されていることが多い。私がこの詩に出会ったのはランボーが1870年にこの詩を作ってからちょうど100年後の1970年。毎日フランス語を熱心に勉強していたころ。
それから半世紀が過ぎ、老いてひとつ場所から動くことができなくなり、せいぜい喫茶店かスーパーが動ける範囲になってしまった!
ランボーの言葉通り、「いや遠く」ビヤン・ロワン j'irai loin, bien loin 旅したいものである。
Sensation
Par les soirs bleus d'été, j'irai dans les sentiers,
Picoté par les blés, fouler l'herbe menue :
Rêveur, j'en sentirai la fraîcheur à mes pieds.
Je laisserai le vent baigner ma tête nue.
Je ne parlerai pas, je ne penserai rien :
Mais l'amour infini me montera dans l'âme,
Et j'irai loin, bien loin, comme un bohémien,
Par la nature, heureux comme avec une femme.
Arthur Rimbaud
Mars 1870
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