2021年6月10日木曜日

美味な台湾産パイナップル

   今年の3月ごろ、台湾と中国の関係が政治的にぎくしゃくするなか、中国の税関当局が突然台湾産パイナップルの輸入を禁止しました。台湾産パイナップルから害虫が発見されたというのがその理由です。台湾の年間パイナップル生産量42万トンのうち約1割が輸出に回され、そのほとんどが中国向けでした。

 春から初夏にかけてパイナップルの収穫時期直前に突然輸入禁止措置を取った中国税関の行為は政治的嫌がらせのひとつでしょう。2010年、尖閣諸島国有化問題に伴う日中対立が激化したとき、中国が日本向けに輸出してきたレアアースを禁輸したのと同じにおいがします。

 レアアース事件が日本に打撃を与えたかというと、日本は戦略物資を一国に頼る危険性に気づき、輸入先をオーストラリアやモンゴルなどに分散させるとともに、レアメタルを多く必要としない機器の開発にも取り組み、結局中国の制裁を無力化できました。

 今回のパイナップル事件も同じような経過をたどりました。台湾のパイナップル農家の窮状を聞いて大きく動いたのが日本の消費者です。ネットには「台湾産パイナップルを買いたいのだけれどどこに売っているの?」という質問があふれ、どこそこのスーパーで見かけたとか、大手スーパーが4月から大量に売り出し予定、などとにぎやかでした。

 台湾産パイナップルは甘く美味なうえ、堅い中心の軸まで食べられるというのが一番の魅力らしく、5月ごろになってようやく地元のスーパーでもお目にかかるようになりました。食べ慣れたフィリピン産のものと一線を画す甘さに感動!パイナップル表面のでこぼこの度合いも少なく、確かに芯まで独特の歯ごたえがあって美味です。

 パイナップルってこんなにおいしい果物だったのか、と改めて感動しましたが、むしろなぜ今まで安価ながら少々酸っぱいフィリピン産のものしか売ってこなかったのか、日本の果物流通業界の怠慢も感じました。中台パイナップル戦争のおかげで、図らずもおいしい果物に巡り会え、台湾農家も日本の消費者も喜んでいる現状を中国の政策当局はどう思っているのでしょうか。台湾の独立、帰属のような高度に政治的なイシューに対し子どもじみた嫌がらせを仕掛けた中国の負けはあきらかです。


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