2020年1月15日水曜日

オーストラリアの森林火災に思う

オーストラリア南東部はメルボルン、シドニー、ブリスベン、ゴールドコースト等、政治、経済、観光業の中枢地域を抱える豊かで風光明媚な土地柄です。平坦なオーストラリアにあってこの地域は海岸西側に山脈があり適度な雨が降るのか広大な森林が広がっています。
そんなオーストラリア南東部を中心に昨年来大規模森林火災が発生、壊滅的被害を受けている映像を見るにつけ心が痛みます。同国の歴史を見ても経験したことのない猛暑と乾燥した気候により、いったん発生した火災は半年たっても鎮火することなく広がり続けていて、その煙は遠く南米にまで達しているといいます。森林火災は人間だけでなく幾億もの野生動物の命と住処を容赦なく奪い植物にとっても大変な試練です。
そんなオーストラリアに30代のころ一度だけ出かけたことがあります。初めて見るオーストラリアの動植物はそれまでアジアや欧米で見たものと全然違っていました。植物界では乾燥に強いユーカリの仲間が1人勝ちで繁栄し、動物界では有袋類ただ1種類があらゆる形態に進化しオーストラリア全土で独特の生活をしていることに驚嘆しました。肉食のタスマニアデビル、モグラのように地下に穴を掘って暮らすウォンバット、生きたぬいぐるみコアラ、トラの模様を身につけたタスマニアタイガー(絶滅)等々珍獣の宝庫。
このように元々ひとつの種がいろんな形態に進化する現象を生物学では“適応放散”と呼ぶらしいのですが、オーストラリアでは動植物の長い進化の様子がはっきり見えることに大変驚いたものです。ほかの大陸から孤立し悠久の時間の中を高温乾燥に耐え、命を繋いで進化してきた動物や植物は幾たびか繰り返された森林火災に負けない戦略がきっと遺伝子に組み込まれているはずです。
オーストラリア同様よく山火事が起きる米国カリフォルニア州にはチャミーズというバラ科の常緑低木があるそうです。この木はグリースウッドとも呼ばれ、乾燥すると油をまき散らしながら激しく燃え、周囲の火に弱い植物を一掃、そして火災が収まると急速に芽を吹くといいます。何と賢く恐ろしい植物!(ナショナルジオグラフィック誌記事参照)。
オーストラリアの大規模山火事(bushfire)もやがては収まり新たな命であふれることを祈るばかりです。

0 件のコメント: