今年は東京で史上2度目のオリンピックが開催され、期待感あふれる正月になるのかと思ったら、アメリカによるイランの司令官殺害事件、IRリゾートがらみの複数国会議員に対する贈収賄事案が発覚するなど波乱の年明けになりました。
なかでも驚きだったのは元日産自動車会長カルロス・ゴーン被告の国外逃亡事件です。4通ものパスポートを所有しており、音響機器を収納する箱の中に潜んで関西国際空港の税関をすり抜け、プライベートジェットで一路イスタンブール経由、住まいがあるベイルートに逃げ去った、と報道されています。
夢にまで見たであろう故国に到着早々ゴーン被告は、日本では容疑者の人権を無視した不法な取り調べを受けた、と声明を出していますが、本当のところ逃亡劇の全体像はどんなものだったのでしょう?
若いころ見たアメリカ映画「ミッドナイト・エクスプレス」(アラン・パーカー、1978)ではトルコを旅していたアメリカ人青年が軽い気持ちでハシシを持ち出そうとして空港で逮捕され、3年間地獄のような獄中生活を体験、あと少しで釈放されると思ったら、アメリカとトルコの関係が悪化し、見せしめのために今度は30年の刑を言い渡されます。アメリカ政府の力も及ばず、絶望のどん底に突き落とされた青年はついに「ミッドナイト・エクスプレス」に乗ること、つまり脱獄を決意します。凄絶な脱獄シーンに大学生だった私は震え上がりました。
映画の中のアメリカ人青年はゴーン被告と違って金も有力者への伝もなく、まったくの偶然で監獄から脱出できるのですが、原作は実体験に基づいた話だそうです。現代においても中近東やアジア諸国では薬物がらみ、政治がらみで明確な証拠もなく逮捕され死刑や終身刑を受けることはよくあります。ゴーン被告にとっては日本もそうした人権無視の国々のひとつでしかなかったのかもしれません。だからこそ裁判など待っていないでミッドナイト・ジェットに乗ることを決意したのでしょう。
ことの善し悪しは別にして、音響機材を入れる箱の中に隠れて日本から脱出するなんて、私なら心臓が破裂してしまいそうでとてもそんなことはできません。やはり2万人もの首を切ったゴーンは日本人の想像をはるかに超えたトンデモ野郎です。
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