10月下旬、全国的に新型コロナ感染者数が激減した時期を狙って東京に行ってきました。昨年の正月明け、リニューアル・オープンしたばかりの東京京橋にあるアーティゾン美術館に行こうと思っていたらコロナが始まり、今日まで2年近く東京に出かけることを控えていたのです。
アーティゾン美術館とはかつての「ブリヂストン美術館」であり、ブリヂストンの本社ビル建て替えに伴って、最新鋭の設備と機能を備えた美術館として数年がかりで全面リニューアルされたものです。
高校生のころ初めて訪れたブリヂストン美術館で出会ったセザンヌの「サント・ヴィクトワール山」は終生忘れられない名画としていつも私の心の中にあります。東京で学生生活を送っていたころ、関西に居を移してからも、そして岡山で老後生活をしている現在も上京の機会があればこの絵に会いに出かけてきました。
新美術館は現代の絵画作品の大型化に対処できるよう天井が高くとられ、また欧米での最新の展示技術、観覧予約システム等も採用していて、世界水準の美術館になっていると思いました。ただ館内の照明が全般に一様に明るく平板で、ひとつひとつの作品が広い空間に埋もれているような印象を受けました。「サント・ヴィクトワール山」も高校生のころ初めて訪れたときの暗い展示室に浮かびあがる圧倒的な迫力がかなり減衰して感じられました。美術館の運営に何の力もない1ファンが自分の思うような展示方法を望むのはしょせん無理な話ですが。
東京に行った帰りにもうひとつ長年気になっていた熱海のMOA美術館にも初めて行くことができました。宗教法人「世界救世教」の創始者岡田茂吉のコレクションが所蔵展示されている美術館です。長いエスカレーターを何台も乗り継いで展示室に至る壮大な構造の美術館にびっくりでした。ちょうど「琳派展」が開催中でしたが、観客も少なくゆっくり国宝級の絵画や工芸品を間近に鑑賞できてラッキーでした。
二つの美術館をパパっと回ってみたのですが、コロナ禍ですっかり乾いてしまった私の心にみずみずしい「気」が戻ってくるのが感じられました。MOA美術館の庭園から見渡せた伊豆の海のように、ポストコロナの世界はきっと青く澄み渡った豊かなものであろうと心が高鳴りました。
写真、上2つはアーティゾン美術館
下は熱海、MOA美術館
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