昨日(10.26)、いつもの散髪屋で髪を切ってもらっていたらちょうど眞子さまの結婚会見が目の前のテレビに映し出されました。小さなピンクの薔薇のブーケをもった眞子さまが家族と別れるシーンは映画の中のシーンのように感動的でした。ただ弟君がいなかったのはなぜかな?という気がしました。
今朝は朝からモーニングショーで改めて会見のシーンを流していて、眞子さんというのはなかなかの人物だなと思いました。長い皇室の人物伝の中で一休宗純(いっきゅうさん)に並ぶ傑出した人だったのではといったらおおげさかも知れませんが、すごい人だと思います。ちなみに一休さんは自らを狂雲子と呼び、幼名は千菊丸、号は夢閨(むけい)あるいは国景(こっけい)と称し、なんとなく「こむろけい」の字面が並ぶのは悪い偶然でしょう。室町時代の臨済宗大徳寺派の僧で詩人、説話のモデルとして知られていますが、出自は後小松天皇の落胤と伝えられています。
晩年の一休和尚は70代後半になって盲目の森女(しんじょ)を愛人にし「一代風流之美人」と玉のように森女をいとおしんだそうです。森女は20いくつで一休より50歳も若く、一休によれば楊貴妃並の美貌だったとか。今ふうに言えば彼女は盲目のシンガーソングライターだったのでしょう。「憂きもひととき、嬉しさも、思ひませば夢候よ」(森女)
一休宗純は当時の平均寿命の倍の87歳まで生き、マラリアで亡くなったのですが、臨終の言葉はかの有名な「死にとうない」でした。悟りを開いた高僧の最後の言葉に一休さんの非凡さがよく現れていると思います。墓所は21世紀の現在でも宮内庁が管理していて立ち入りできないということです。眞子さまもあらゆるスキャンダルにも耐え(屁とも思わない?)、ニューヨークでの新生活を男に用意させ、最後の会見でも「しおらしさ」のかけらもない堂々とした主張をしていたことにわたくし岡は参りました。
眞子さまから連想する女性がもう一人います。スタンダールの「赤と黒」に登場するマチルドです。小説の後半、パリに出た田舎者のジュリアン・ソレルが出会って結婚するドラモール公爵の娘です。ジュリアンとマチルドの恋愛はまるで2匹の猛獣が取っ組み合いの喧嘩をしているような凄惨なものでした。父親の公爵にとって執事というか住み込み下僕と思っていたジュリアンがまさか娘のマチルドと出来ていたなんてとんでもない悪夢。「公爵の令嬢が大工風情のせがれと結婚する!?」気が狂いそうになりますが、マチルドはジュリアンにぞっこんでどうしようもありません。1830年のパリは王政復古の時代で21世紀の日本などとは比較にならない貴族社会でしたから、秋篠宮の苦悩などかわいいものです。そもそもプライドが高い小娘のマチルドがなぜ下層民のジュリアンに惚れ込んだかというと、マチルドは貴族社会に生まれて退屈しきっていたのです。「美貌、才能、名声、財産、私にはすべてがそろっている。ああ幸せだけを除いて!」と16、7の小娘が日々鬱々と過ごしているところへ、とんでもない魅力的な若者が公爵邸に就職してきたのです。
父親の秘書、ジュリアンソレルは大変な美貌の持ち主だったうえに、誇り高く、野心に燃え、何を考えているのかつかみどころがない。貴族社交界にはいないタイプ! マチルドにふさわしいと思われていた婚約者の貴族青年ドクロワズノワなどは要するにかっこばかりつけていざというとき何の力もない唾棄すべき存在だったのです。
ジュリアンとマチルドの結婚は、しかしハッピーエンドにはなりませんでした。ジュリアンが昔の愛人、レナール夫人を教会で銃撃し大けがを負わす事件を起こし、死刑の判決を受けます。マチルドは陪審員を買収してでも夫を救出しようとするのですが、ジュリアンはこれを拒否。レナール夫人と過ごした幸福な日々を思い出しながらギロチンの露と消えていきます。ジュリアンの葬儀ではマチルドは何万枚もの金貨を用意させ、葬儀参列者に金貨をばらまくというトンデモアイデアを実行します。マチルドによれば後々、人々がジュリアンソレルのことを思い返すとき、ジュリアンのイメージ(成り上がり青年が痴情事件を起こして死刑にされたというぱっとしないイメージ)に金貨が投影されて輝かしいものとして連想される効果を狙ってのことでした。いっぽうレナール夫人もジュリアンの死の数日後後を追うように死にます(死因は述べられていません)。
ながながと書いてきましたが、眞子さまの強い意志の背後に何があるのかは想像できませんが、皇室には一休宗純のような人物が血脈の中にいること、19世紀のフランスにもマチルドのような人物が文豪スタンダールによって描かれていたことなどを勝手に結びつけて、私の感想といたしました。菊のカーテンを破って現代のバビロン、ニューヨークへ。私でも若さと才能と財産があったらこんな田舎生活はすぐさま捨ててニューヨークに行きたいものです。
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