東京や大阪のターミナル駅周辺の再開発ブームはいっこうに収まる気配もありません。歴史的建造物として価値がある郵便局やまだまだ現役で使えそうな10階建てのオフィスビルなどが次々取り壊され4,50階建てのビルに生まれ変わっています。
東京の新宿歌舞伎町と言えば1970年代、私の学生時代にはバーやキャバレー、風俗店がひしめきあい、私のような真面目な学生が近づけるような場所ではありませんでした。2000年ごろには中東系の怪しげな売人が路上で麻薬や危険ドラッグを誰彼かまわず売り付けて大きな社会問題になりました。
それからさらに20年が経過し今や歌舞伎町にも超高層ビルが建ち、高級ホテルが入居し、何だかすごくバブリーな街に様変わり。大阪も負けてなく、東京の場合と同じような無機質な街へと変貌しています。
この空前の大繁栄が日本の企業によってもたらされ、そこから生じる莫大な利益が日本人の懐を潤しているのなら文句はありません。しかし超高層ビルの上層階にできるラグジュアリーなホテルは例外なく外資によるもので最低でも1泊10万円をはるかに超えます。豊かな訪日外国人をターゲットにした設備と価格設定に違いありません。
これは何のことはない、日本人が外国人観光客のサーバントになって、快適なサービスを提供し、山海の珍味を惜しげなく使った料理で彼らの胃袋と脳味噌を喜ばせているのです。そこで働いているのは結婚生活もあきらめざるを得ない低賃金日本人若年層。バブル崩壊後の30年間、日本は世界の発展から取り残され、しかも国内の貧富の差はかつてないレベルまで拡大してしまいました。
もちろん中国でも欧米でも貧富の差は日本以上に大きいものがあるのは事実です。でも日本が諸外国の社会の発展事情と大きく異なるのは、日本社会における貧富の差はほんの30年前ぐらい前まできわめて小さかったこと。国立大学の年間授業料はたったの12000円。家が貧しくても勉強を頑張れば医者にもなれたし、弁護士にもなれました。
今日の結婚も想定できない若者の群を見ていると、東京や大阪の空前の繁栄ぶりが空しく感じられます。あの都市を支えているのは日本の貧しい労働者と若者達、莫大な利益はすべて国外に流出していきます。