「かかりつけ医制度」に対する危惧
日本に住んでいて本当にありがたいと思うのは、国民皆保険のもといつでも患者が希望する医療を受けられることです。それがどれほどすばらしいことか、日本で暮らしてきた私たちにはピンときません。
しかしながらこの日本でも厚生労働省の旗振りで患者と大規模病院の間にずいぶん高い壁ができています。すなわち1993年に制度化された特定機能病院というさんの診療はお断りという仕組みです。2016年の4月以降は紹介状を持たない初診患者からは選定医療費として5千円以上の金額を徴収することが特定機能病院の義務となりました。
初診の定義については病院によって他科を受診中なら選定療養費が免除されたり運用に多少のばらつきがありますが、最近どんどん厳格化しているように感じます。厚労省のもくろみはいわゆる「かかりつけ医」制度を普及させ、かかりつけ医の判断で必要に応じて専門病院を紹介するシステムの構築にあります。
もしかかりつけ医制度の仕組みが徹底されたらいったいどうなるのか、ちょっと想像してみると暗い気持ちになります。政府が想定しているかかりつけ医の主体は町の内科のお医者さんたちでしょう。
たとえば目に異常を感じて専門医に診てもらいたいと思っている人もまず内科を受診しなくてはいけないのでしょうか。目だけではなく膝が痛い、味覚が変、アトピーが悪化したなどという人が紹介状を書いて下さいと内科の診療所に押し寄せたら、内科診療所の先生もたまったものではないと思います。
たまたま近所に眼科や耳鼻科のクリニックがあって、そこを訪れた人が医師の見立てに疑問を感じ、「大学病院で診てもらいたいので紹介状を書いてほしい」と思っても簡単に切り出せるでしょうか。私自身以前、近くの行くのが初めての耳鼻科クリニックを受診したものの治りが悪く、「治療効果が感じられない」と疑問を呈したらその医師から口汚く罵倒された苦い経験があります。
だれでも先進医療を受けられる日本人にとって大学病院や大規模総合病院こそ、一生を通じての本当の意味での「かかりつけ病院」です。大病院でしっかり検査して確定診断を下し、治療方針が固まった患者こそ、町の診療所へ逆に紹介してもらいたいものです。
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