2008年10月16日木曜日

歯科自由診療


 何ヶ月も前から左上の小臼歯付近の口蓋からときどき膿が でるようになりました。いつまでも放置していては歯だけでなく 全身の健康にまで影響がありそうで、痛みが強くなった日、 意を決して近所の歯科医院を訪ねました。

 ところがこの歯医者さん、今年の春、元の医院のすぐ近くに ひどくバブリーな自由診療の分院を開設、大先生はそこで ご自身が理想とする診療に専念されることになったのです。

 私は従来通り保険診療もある本院の方へ出かけたので すが、「これは理事長に診てもらった方がいい」ということで 半ば自動的にお高い方に振られてしまいました。

 高級ホテル並のインテリア、超大型テレビの前には ブルガリのソファが鎮座し、さらにピアノやバーカウンタに ワイングラスまで備えられています。ときおりハイソな 上得意様を招待して「弦楽四重奏の夕べ」でも催している ようすがうかがえます。

 「ここは自分の身の丈にあってない、要するに治療以前に 居心地が悪い」という気がしたもののさりとて逃げ出す勇気も ありませんでした。診察の結果は、最悪の場合、抜歯して インプラントになるかもしれないとのことでした。

 でもどっちみちインプラントは保険がきかないし、他の 歯医者さんを探すのもめんどうなので先生におまかせ することにし、次回の予約票をもらって帰りました。 そこにはこのように書かれていました。

 「上質な治療を選ばれたあなたはとてもすばらしいと思います」

 先生も言うよねえ! (続く)

***

 歯科自由診療(下)

 自由診療の歯科に予約を入れたもののずいぶん迷いました。 株は史上空前の暴落をしているしこの先どんな経済事情が 待っているか不安です。それにそもそも保険による治療が そんなに劣悪とも思えません。

 ちょうど同じころ父が入れ歯をなくしたと言いだし、父を近所の 別の歯科医院に連れていきました。待合室の雰囲気もいいし 物静かで誠実そうな先生の人柄には好感がもて、私もここで 診てもらおうと心に決めて家に帰りました。

 ところが人のうわさは怖いもので、その歯医者に治療して もらった人が「あそこはお薦めできません」というのです。 理由を聞いたら歯髄が生きているかどうかを調べるのに いきなり歯に電気を通され、衝撃がズッキーンと脳天を襲ったとか。

 実は私も昔大阪でこれをやられたことがあります。車のキーが 静電気でパチッと鳴っても心臓が止まりかけるぐらい極度の 電気恐怖症の私にはそんな歯医者は論外です。

 結局、予約どおり自由診療の先生のところに行きました。 とびきり容姿端麗なアシスタントのお嬢さんが滅菌スリッパを 履かせてくれるのも今日は嫌じゃないな!

 撮影と同時に診察室のテレビモニターに拡大表示される X線写真や歯根部まではっきり映し出されたモニター映像を 見ながらの治療はこれまでの“何をされているのか分から ない恐怖”とは無縁でずいぶんリラックスして治療を受ける ことができました。

 結局、問題の小臼歯は抜歯を免れ治療費も案外リーゾナブルな ものでした。いったん“上質な治療”の快楽に染まったらたたきに 靴やサンダルが所狭しと脱ぎ捨てられている診療所にはもう戻 れません。

0 件のコメント: