2015年4月25日土曜日

アジアインフラ投資銀行

 中国が提唱するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に日本が創立メンバーとして加わるべきかどうかいろいろ議論を呼びましたが、政府は参加を見送りました。現時点ではきわめて賢明な判断だったと思います。

私はAIIB設立の話を聞いて一番に連想したのは「新銀行東京」の存在です。日本の金融業界がバブル崩壊後、巨額の不良資産を抱えてボロボロだった時代に東京都の石原知事が旗を振って2005年に開業した銀行です。もうとっくの昔に潰れたものと思っていたのですがこのコラムを書くのに当たって調べてみたらまだ細々と存続しているようです。

ふつうの銀行なら絶対お金を貸さない物件に無担保、ほぼ無審査で融資を実行しわずか3年で1000億の累積赤字を抱え事実上の破綻に陥りました。都民のお金をドブに捨てたというのに石原知事はもちろん誰一人責任を取った人はいなかったように記憶しています。

AIIBは新銀行東京よりはるかに大きな問題を抱えていると思います。中国は日本が参加することを望んでいるようですが、その狙いはGDPに比例する巨額の出資金であることは言うまでもありません。そして使い道はアジアのインフラ整備と言っても勝算のない“中華帝国”再興の夢に寄り添うものに限定されることは火を見るよりあきらかです。貴重なお金がそんなことに使われる可能性がある正体不明の銀行に日本政府が同意しないのは、つい10数年前3メガバンクですら破綻するのではないかとヒヤヒヤした日本人にとって当たり前の話ではないでしょうか。

AIIB騒動のおかげで既存の世界銀行やアジア開発銀行が発展途上国の資金需要にちゃんと応えていない現実もあきらかになりました。日本が歴代総裁を送り出しているアジア開発銀行はAIIBに触発されてさっそくいままで融資審査に時間がかかっていたのを大幅に短縮する改革案をまとめました。世界銀行、IMFでも同じような改革がなされるのではないでしょうか。

中国が覇権・拡張主義ではなくアジア諸国の均衡ある発展に本気で取り組んでいることが確認されて初めてAIIBに参加しても決して乗り遅れなどにはなりません。アメリカのほかにも国際問題では良識ある政策をとることで定評あるカナダが不参加であることも心強い気がします。

健康2題、早歩きと食事習慣

最近健康に関するニュースでいいかも!と思ったことが二つあります。  

一つ目は脂肪肝の改善に関する話題。筑波大学の正田純一教授(消化器内科)らの研究チームは、脂肪肝は早歩き程度の少し強めの運動を毎日30分以上続けると大きく改善するという研究結果を発表しました。

歩くことが健康にいいという説は今までも耳にたこができるほど聞いてきましたが、今回の研究発表の真新しい点は“運動を続ければたとえ体重が減らなくても脂肪肝は改善する”と指摘したことです。

今まで私のウォーキングは肥満を解消することに主眼を置いていて、その成果のなさにすぐに歩くことを諦めていたのですが、目に見えなくても歩きさえすれば体の内部から健康が取り戻せるとは朗報です。

実際これまでも健康診断の前に1ヶ月ほどウォーキングをすると中性脂肪の値が激減することは自分自身経験してきたことなのですが今回の発表は我が意を得たりです。どこを歩くかなどといろいろ考える前にまず行動しよう。時は春、山桜が満開の今から梅雨までの今の季節がウォーキングには一番気持ちのいい時期です。

もう一つなるほどと思った話は何かと極端な健康法を実行しているとテレビや著書で公言している南雲吉則先生の「1日1食」主義です。先生自身、この習慣を確立するのには何十年もかかったと言っているので今の私にそんなことは到底無理。しかし先生いわく食事は「お腹がぐうぐう鳴りだしてから食べるべき」という話には説得力があります。

戦後の食糧難の時代だけでなく人類は何百万年前からつい最近までほとんどの時代を飢餓状態で生きてきました。いわばお腹がすいているのが正常かつ通常の状態でした。

死ぬほどの空腹に耐えながらも力をふりしぼって獲物を捕るためにがんばって生き残ったものだけが今も生き残っている現代人なのだから自分にも空腹に耐える能力は備わっているはず。まずはお腹がなるかどうか確認するまで食事は待ってみようと思います。

南雲先生は話のついでにエネルギー不足によって性生活はかえって強くなるとも言っています。なるほど梅でも桜でも枯れる前には狂ったように花がつきます。子孫を残す本能が働くからでしょう。

ペデストリアンデッキ


ペデストリアンデッキ

老朽化した岡山市民病院が5月7日山陽本線長瀬駅そばに移転新築オープンするそうです。救急患者を24時間受け入れてくれる病院が交通の便利がいい場所にできるのは心強いものです。しかし……。

オープンに先がけて市の広報誌とともに新病院の紹介パンフレットが配達されましたがパンフレットを読んでいて気になる言葉がありました。

「ペデストリアンデッキ」。生まれて初めて目にする言葉でびっくりしました。何のことかというと北長瀬駅と病院を結ぶ連絡橋のことでした。いったいなぜ病院の広報担当者はこんなこむずかしいカタカナ用語を年寄り相手の病院の紹介記事に使用するのか理解に苦しみます。

そもそも辞書に載っている単語なのかどうか最新の広辞苑を開いてみたら確かに見出し語にありました。しかしこの言葉はWikipediaによると和製英語とのことです。そこに掲載されている写真は何のことはない横断歩道橋そのものです。

連絡通路、歩道橋、陸橋(少し古いが)とちゃんとした日本語があり定着しているのにも関わらず市民病院の広報誌になぜこんなめくらましの言葉が必要なのでしょう?おそらく設計図か計画書に技術者がそんな言葉を書き込んでいたのをそのまま広報誌に使ったのでしょう。何となく新しくてすばらしいものができたと市民が感心してくれることを望んで。

その一方、同じ広報誌に診療科目の案内もありますが、そこには「標榜診療科」と記してあります。この「標榜」という言葉も病院関係者のお気に入りの言葉です。あえて標榜している科目があるということは実は陰でこっそり診察してくれる科もありますよ、という意味なのかと勘ぐりたくなりますが実際はただ単に慣習としてこんなこけおどしの漢語を使って病院の立ち位置をアピールしているだけのことです。

このパンフにはもう一つ重大な配慮に欠ける点があります。「二人主治医制」つまりかかりつけ医を持ち、市民病院にくる際はかかりつけ医に紹介状を「お願いしましょう」と書いています。では紹介状なしで受診したら特別の負担金を取られるのかどうか明記していません。病院に電話して確認したら「取る」とのことでした。市民目線に立たないパンフを採点すると65点ぐらいでしょう。