2019年11月28日木曜日

岡山に無事帰りました

羽田空港で帰りの岡山便を待つあいだ1時間半ほど時間があったので第2ターミナル1階にある東邦大学羽田空港クリニックで腹痛を診てもらいました。ふつうの町中の診療所とまったく同じで、まず保険証を提示し、問診票に症状を記入し、体温を測ったりしながら待っていたらすぐに順番がきて若い女医さんが診てくれました。駆け出し(?)女医の背後にベテランぽい女性医師がついています。もちろん羽田空港のクリニックにかかったのは初めてのことで、医師は私の言うことをパソコンにひたすら打ち込んでいきます。最近の医者は何だか医者というより速記のプロみたいな存在です。いかに早くキーボード入力ができるかが医者の腕前ということでしょう。

一応、診察台の上に横たわって腹をあちこち押さえられ、自分の予想どおり「大丈夫でしょう。岡山に帰ってから病院に行ってください」となりました。でもこの言葉を聞いてから搭乗するのと不安をかかえたまま乗るのとでは気分的に大違いです。機内では持参していた世阿弥の「風姿花伝」現代語訳(PHP)を読んでいるうちにすぐに岡山に到着しました。

それにしても日本の健康保険制度はありがたいです。岡山市が発行した保険証が全国どこでも使えるうえに、働いていないのに老人ということで2割負担で済みますから。支払ったのは初診料の580円のみ。クリニックの収入は2880円。診察時間は正味15分として、これで医師2人分、看護師、受付2人、テナント料、その他もろもろの経費を考えたら、診療所の経営なんかやってられないでしょう。よく知らないけれどもし同じことをハワイの空港でやらかしたら軽く500ドルは取られるのではないかと思います。

2019年11月27日水曜日

東京1泊旅行

現在、東京上野にある東京都美術館で、印象派およびポスト印象派のコレクションで名高いロンドンのコートールド美術館展が開催中です。シスレー、マネ、ルノワール、ドガ、セザンヌ、ゴーガン等々おなじみの画家のしかも超名作ばかりが日本にやってきているのですから見に行かないわけにはいきません。さいわい全日空がいつもより少ないマイルで特典搭乗できるキャンペーンをやっていたので、気がかりなことがあるのにも拘わらず予約を入れました。
気がかりとはお腹に慢性的な痛みがあることです。先ごろ病院でエコー検査を受けたところ「特に異常は見つかりません、様子見でいいでしょう」とのことでした。しかし上京の日程を決めてから心なしか腹痛の度合いが増してきたような気がします。しかも以前は痛い箇所が曖昧だったのに今はお腹の左下に強い痛みがあることがはっきりしてきました。
ああ、それなのにバカな私は病院ではなく東京に来てしまった! 何とかなるだろう、東京は未開の地ではない、名だたる病院もいたるところにある、保険証も持ってきた。実際、東京に来てみると雨模様ながら楽しい。文句なく世界一機能性と情緒がマッチした大都会。住んでいたのは50年前の学生時代たった4年間だけなのに、いつの間にか自分の中の原風景みたいな街になっている……。
お腹の痛みは潮が満ち引きするように強くなったり弱まったりしつつも、旅の目的のコートールド展はこころゆくまで堪能できました。問題は帰りの飛行機です。機内で腹痛がぶり返し我慢できなくなっても空の上を飛んでいるからには「気分が悪い、降ろしてくれ」というわけにはいきません。テレビドラマでよくあるドクターコール、「お客様の中にお医者様はおられませんか?」のシーンが目に浮かびます。まったく旅行も命がけです。

思えば昔の人は旅に出ることはある意味、死を覚悟することでした。むしろ西行や芭蕉のような大詩人は客死することに積極的な意味と美学を見いだし、そこに人生の完成形を夢見たあとがうかがえます。しかしながら私のような凡人は脇腹の痛みさえ重病のサインのように思え、不安がつのり、無事岡山に帰れたら場合によっては夜間でも病院にすっ飛んでいこう、と臆病風丸出しです。

2019年11月20日水曜日

病院にペーパータオルを

 カナダから従兄たち一行6人がバカンスで訪日し、彼らを乗せたダイヤモンドプリンセス号が鳥取県の境港に立ち寄るというので会いにいきました。津軽海峡を回るクルーズ船は巨大な船にも関わらず折からの強風で揺れて船酔いし、秋田では接岸不能で大変な行程だったようです。
 日本に来るのは初めての人や十数年ぶりの訪日という人もいました。そしていっしょにわいわい松江城や宍道湖を観光したり食事をしながら、日本での印象等いろいろ興味深い話を聞くことができました。
 街や道路が清潔に保たれていること、至るところにある自動販売機が壊されることなく動いていること、トイレが機能的で清潔であること、店員の応対がとてもていねいで親切なこと等々、日本のいいところを率直に評価していました。
ただ、ひとつふたつ、私自身も常日頃外出先で不便だなあと感じていたことをカナダからやってきた従兄たちに指摘され、「やはり」と思ったことがありました。街にゴミ箱がないことと、トイレはどこでもこの上なく快適なのに手洗いにペーパータオルが設置していないことです。
思い返せば、昭和時代にはゴミ箱は至る所にあったし、飲食店では両手で布を引っ張り降ろして使うタオルマシーン(?)がありました。なつかしいあの機械は今いずこ? それに代わってこのごろコンビニなどでは電動水切り兼温風乾燥機をよく見かけます。しかしあれを皆様気持ちよくお使いなのでしょうか?
濡れた手を差し込むスペースが狭くて、よほど注意深く手を入れないと手の甲または手の平が機械の縁に接触し不快です。おまけに100Vの機械では温風というより生ぬるい風しか出て来ないのですっきり乾かすことができません。
その点やはり一番すぐれているのはペーパータオルでしょう。とりわけ病院のような衛生に極度に敏感でないといけない場所ではトイレのペーパータオルは必須アイテムだと思います。外来患者が持参した、清潔さが必ずしも担保されないハンカチで手を拭かれるよりペーパータオルを提供することは場所柄決して無駄なことではないと思います。日本でもハンカチを持ち歩かない種族が増えている昨今、病院に限らず、美術館等のトイレにもペーパータオルを置いてもらいたいと心から願います。

2019年11月13日水曜日

キムチ

 まもなく韓国が一方的に破棄を宣言したGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の有効期限が終了しようとしています。日本政府は徴用工問題を韓国政府が責任をもって解決しない限り、韓国に対する輸出管理の厳格化を緩める気配を見せず、ひとり韓国政府があせりまくっている状況です。
 一般の世論も一時は韓流ブームやK-POPで好意的であったのに今や民間の日韓交流まで冷め切っています。昔は韓国が一方的に反日をやっていたのに今では日本も嫌韓をおおっぴらに表明してもかまわないといった雰囲気が作られています。情緒的にも噛み合わない日韓関係にあって、韓国発祥と言われるキムチだけは、世界の発酵食品の歴史のなかでも特別すばらしい発明のひとつであり、文句なしに「さすが!」と賛辞を贈りたいと思います。
 昔からときおり発作的にキムチを食べたくなる衝動にかられます。スーパーにはいろんな輸入品や国産キムチが色とりどり並んでいますが、できれば手作りが一番です。そんななか最近YouTubeで発見した韓国系の料理研究家のコウ ケンテツさんのレシピは作る前からおいしそうな感じがして、さっそく白菜を買ってきて仕込んでみました。
 白菜をいったん5%の塩で漬けてそのあと自家製キムチヤンニョムとともに漬け込みます。ヤンニョムの中身は韓国産のトウガラシ、アミの塩辛、ナシ、リンゴなどの果物、ニラ、セリ、ニンジン、ダイコンなどの野菜、それにショウガ、ニンニクなどの薬味を加えたものがベースです。私はバリエーションとしてイカの塩辛、ワケギ、今がシーズンの柿などを加えて仕込みました。
 晩秋のおだやかで暖かい日が差し込む部屋に置いて乳酸発酵が進むのを待つこと3日、もうすでに最高のキムチに仕上がっていました。アミの塩辛は手作り、野菜や果物もできるだけ庭で採れたものを使ったのでおいしくないはずがありません。

 考えてみるとそれぞれ単品では単調な野菜、果物、海産物、香辛料をこれだけぜいたくにまた複雑に組み合わせた食品は、キムチのほかに思いつきません。トウガラシも極端に辛いわけではなくかすかな甘みが胃を刺激します。個性豊かで強烈な食材が作り出す絶妙のハーモニー。日韓の対立もいつかはこの超絶食品のように止揚(アウフヘーベン)する日が来るのでしょうか?

2019年11月6日水曜日

郵政民営化から12年

 先日、介護保険料の支払いと通帳記帳を半年ほど怠っていたので近くの集配郵便局に出かけました。ATMで記帳したところ余白ページがなくなり、支払いの件も含め通帳繰り越しのため、窓口で番号札を取りしばらく待ちました。
 平日の昼下がりの郵便局は民営化前とあまり変わらず、年輩のお客が目立ちます。思い起こせば小泉内閣時代、郵政民営化を巡って自民党は二つに割れ、郵政解散があり、民営化反対の立候補者に対しては“刺客”などという物騒な対立候補を送り込む大乱闘がありました。
 それから12年の歳月が流れ、当初心配された過疎地での郵便サービスの消滅、極端な不便化は避けられ、あまり目立ったクレームは発生しなかったように思います。しかし今年7月に明るみに出たかんぽ生命の不適切契約問題には、顧客軽視の実体が浮き彫りになり、とりわけお年寄りが大きな被害を受けました。
 “郵便局の保険なら間違いはない”という過去の信用に泥を塗る大変な裏切りであり、きついノルマが従業員に課せられたゆえの組織犯罪といってもおかしくない不祥事でした。とはいえ、郵便局の中を見渡してもそんなありえない不祥事があったことなど想像もできません。みなさん誠実、親切に顧客に接していて、昔の郵便局の雰囲気そのままです。
 でも素朴な疑問が湧きました。ゼロ金利時代になってもう何年も経つのにゆうちょ銀行はどうやって社員の給与を工面しているのだろう?民営化以前は350兆円の資金を国や道路公団などに貸し付けて悠々と仕事ができていたはずですが、コストのかかる郵便事業、利益を生まない銀行業、外資保険の販売までやらされているかんぽ事業など、気が遠くなるほど効率の悪い巨大組織です。

 やっと呼び出しがあり用件を伝えました。コンビニなら30秒で終わる公共料金の支払い、銀行ならATMでできる通帳繰り越しに10分もかかりました。伝票を書かされたり、窓口担当者は上席の承認をもらいに席を立ったり、仕事の遅さは相変わらず。「効率が悪く、稼いでいない」これが民営化後の郵便局に対する私の感想です。あれだけ大騒ぎした挙げ句の果てに誕生した民営郵政事業はいずれの分野をとっても顧客サービスはぱっとしないし、職員にとっても厳しい改革だったように思えます。

2019年11月5日火曜日

追悼マリー・ラフォレ

1960年代、70年代のフレンチポップス、シャンソン歌手でマリー・ラフォレほど素敵な歌手はいません。彼女のほとんどすべてのLPとCDを持っていますが、この頃はもっぱらYouTubeで見ています。残るはブリジット・バルドー、アラン・ドロンくらいか。ジョニー・アリディも最近亡くなってもう私も生きる意味がありません!
2019年11月2日逝去。80歳。