2010年10月29日金曜日

サレンダー

 
 尖閣諸島近辺で海上保安庁が拿捕した中国漁船を巡る中国の反応はまさに常軌を逸したものでした。とんでもない隣人をもったものだというのが正直な気持ちです。

 民主党代表選のさなか中国が意図的に仕掛けてきた事件なのかどうか真相はよく分かりません。しかし事件後の中国の対抗措置を見てみるとあの国は長年培ってきた信頼関係をいとも簡単に破る国だということを全世界に知らしめたという意味では中国が失ったものは大きいと思います。

 昔、デンマークを旅行したおりに知り合いのデンマーク人の家に泊めてもらったことがあります。クリスチャンと言う名の大学生でしたが、彼の友人の外交官も加わり夜遅くまでいろんな話をしました。

 私がデンマークはソ連(当時)という強国にバルト海を挟んで隣接していて脅威を感じないか、もしソ連が侵攻してきたらどうするつもりか尋ねたことがあります。すると東京に赴任したこともあるという青年外交官氏はこともなげに“surrender”と答えました。
 
 “サレンダー”とは“降伏する”という意味です。戦わずして白旗を揚げるなどと外交官が言うのはとても違和感がありましたが、考えてみると人口わずか550万人のデンマークにとって武力で超大国に対抗する選択肢など存在しないのでしょう。

 今では記憶が薄くなってしまってクリスチャンが言ったのか外交官が言ったのかはっきりしませんが、“デンマークがソ連に占領されたところでデンマークの文化や魂が消えてなくなるわけではない”とも付け加えました。

 私は彼らの言うことを聞いて、デンマーク人というのは誇り高く賢明で自信に満ちた強い民族だなあと思いました。実際その後あっけなく崩壊してしまったのはソ連の方で同じくバルト海に面したバルト3国は独立し中世以来のハンザ同盟の美しい西欧の都市の表情を取り戻しました。

 さて日本の場合、北欧諸国とは国情が違うにしても、帝国主義的隣国が領土問題(不法占拠)を引き起こした場合、悪夢のような“surrender”が現実味をおびてきます。日本は憲法の定めによって、国際紛争を解決する手段として戦力を永久に放棄していますから。
(photo: Kristian)

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