2011年7月9日土曜日

白夜と狂気、ムンク


 昨日は夏至でした。夕方5時過ぎ牛窓に行った帰り、薄曇りの天気の中、国道2号線を倉敷方向に向かって車を運転して、ふと今の時間太陽はどこにあるのだろうと思いました。しばらくして雲の間から現れた太陽は思いのほか高い位置にありました。さすがは夏至です。

 もうかなり昔のことですが夏至のころノルウェーを旅したことがあります。首都オスロではちゃんと夜があったのに対し北方のロフォーテン諸島は北極圏にあるため深夜零時を回っても外は明るいままでした。

といっても昼間の明るさとは違う陰影のない間接照明のような明るさです。深夜窓から入ってくるこの異様な光にさらされていると精神錯乱を起こすのではないかという気がし、ベッドから起き出して町に出てみると何だかにぎやか。過疎地の島なのに人々は町の中心に集まり白夜を騒いでは楽しんでいました。

白夜の季節太陽はいったいどういう動きをするのかというと、夕刻太陽は西の地平線に沈むのではなく地平線上を北の方向に水平に移動していき、やがて日付が変わるころ真北の地平線ぎりぎりのところで沈むと見せかけてそのまま今度は東に移動しつつ高度を上げていきます。つまり北の空で太陽は楕円の輪を描くようにぐるぐる回っているという感じでしょうか。

一年を通して東の空から昇りやがて西に沈む太陽しか知らない日本人の私にはロマンチックな白夜もなんだか空恐ろしく不気味なものに感じられました。いや日本人だけでなくノルウェーの人々にとってもあの沈まない太陽は狂気を誘う存在ではないか? オスロ市立美術館を訪ねて「叫び」をはじめおびただしいムンクの傑作を見たときそう思いました。

ムンクが描く太陽はギラギラした光線を意地悪く放射するだけで、四季折々暖かく、情熱的に、穏やかに、さわやかに大地を照らす日本の太陽ではありません。でもなぜか日本人はムンクが大好き、毎年どこかの美術館でムンク展をやっています。これは日本人にも極北の白夜の下で暮らしていた民族の血がいくらか流れているせいかもしれませんね。

8月まで東京の出光美術館においてオスロ市立美術館蔵のムンクが3点見られるようです。http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/index.html

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