2014年1月13日月曜日

在宅医療の落とし穴

   在宅で寝たきりとはいえ健康をたもっていた母(94)に突然異変が起きたのは正月明けの7日の夜9時ごろでした。気管切開をしている喉元からイカ墨のような黒褐色のどろどろした液体を噴き出しているのです。
訪問診療医に連絡しようかどうか迷ったのですが、とりあえず独断で手持ちの抗生物質をイロウの穴から注入しました。しかしそれさえ戻して熱は38.4度、呼吸は弱く、血中飽和酸素濃度も下がっていきます。
日付が変わったころ医師に連絡し状況を説明したところ、「様子をみましょう」とのことでした。次第に弱っていく母の横にふとんを敷いて絶望的な気分のなかで黒いどろどろした液を気管切開部から取り除き、またイロウからも胃の内容物を吸い出しながら夜明けを待ちました。
朝、電話口で「急にどうこうない」という訪問医の指示を遮って、これまで何度も母の命を救ってくれた病院へ昼過ぎにかつぎ込みました。救急車に頼らず意識のない母を車の助手席に乗せて。CTを撮ったらすぐ異変の原因が判明しました。以前からあった7ミリほどの腎臓結石が動いて尿管に詰まり腎臓がパンパンになっていたのです。すぐに泌尿器科で実績のある専門病院へ救急搬送してもらい尿道から腎臓までカテーテルを入れて腎臓に貯留していた膿を排出し一命を取り留めました。
最初の病院の医師も専門病院の医師も処置前に「すでに敗血症を起こしている。お母さんの体力がもてば助かるが危ないかもしれない」と念を押していましたが、常日頃密着介護をしている私は内心「そんなバカな」と思いました。
異変をいち早く察知し、医師の抵抗(怠慢)にも負けず、迅速に動いたので手遅れだとは思えなかったからです。案の定、腎臓の中に溜まっていた液はかなりきれいで血圧等容態は処置後すぐに安定しました。
訪問医の指示を守って様子なんかみていたら今頃葬式を出していたでしょう。実際多くの在宅患者が肺炎や腸閉塞、胆嚢炎など原因さえ分かれば簡単に直る病気なのに「家族に看取られ畳の上で大往生した」などと言われて死んでいっているのではないでしょうか。“老衰死”であっても解剖を義務づけてバカな見立て違いで殺される患者をなくすよう法整備することが在宅医療行政にとって喫緊の課題だと思います。

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